好奇心の植物観察

定年退職後に木の観察を始め、草にも手を広げました。楽しい日々が過ぎてゆきます。 (旧ブログ名 樹と木のお話)

カテゴリ: 異形葉

 小石川植物園の第2温室に「キバナヨウラクカズラ Gmelina philippensis」の名札を付けた木が展示されています。

 キバナヨウラクカズラはビルマ、タイ、マレー半島、フィリピンに分布する小高木で、小石川植物園の温室では半落葉性を示します。
 キバナヨウラクカズラ-樹形006 キバナヨウラクカズラ-樹形008
撮影2021/7/28       撮影2022/4/07

 筆者はこの温室がオープンされて間もない頃、この木に、異なる形の葉が付くことに気づきました。
キバナヨウラクカズラ-異形葉029 キバナヨウラクカズラ-異形葉024
   楕円形の葉        葉先が尖り出た形の葉 

 植物が同一個体に異なる形の葉(異形葉)を付けることに関しては、ヤマグワイチョウヒイラギなどの観察から、異形葉の発現にオーキシンが深く関わるとの確信を持ちますが、コロナ騒動や筆者の喘息悪化などで、詳細な観察ができずに過ごしてきました。

 そんな折、ゴールデンウイークの5月1日が雨模様で、訪園者の減少が予測されました。

 狭い温室で長時間観察しても、誰にも迷惑を掛けないだろうと思い、傘を片手に温室へ出かけました。

 しかし心配は全く無用でした。

 と云うのも、極めて短時間に、結論を得ることができたのです。

 以下の写真一枚で、その内容を説明することができます。
キバナヨウラクカズラ-異形葉027s
 上に掲げた写真のように、最近伸びた新しい枝には、葉先が尖る葉が付きますが、過去に形成された古い枝には、楕円形の葉が更新されます。

 もう一度、形の異なる葉をご覧下さい。

 左下写真は、灰褐色の古い枝から、楕円形の新しい葉が伸び始めた瞬間で、
 右下写真は、最近伸びた赤褐色の新しい枝に、葉先の尖った異形葉が付く様子です。
キバナヨウラクカズラ-C枝001s キバナヨウラクカズラ-G枝008
 以上のことから、キバナヨウラクカズラに於いても「オーキシン活性が高く、伸長力が旺盛な枝に異形葉が発現する」ことが確認できます。

 そして同時に、このキバナヨウラクカズラには、明確な不等葉性も発現しますが、その現象は異形葉性ほど単純ではありません。

 筆者は現在、小石川植物園の温室で、継続的なキバナヨウラクカズラの観察を行っています。



 5月上旬、シマシャリンバイの花咲く枝と他の枝で葉形が異なることに気付き、筆者は、花咲く枝ではオーキシンを主とする植物ホルモン動態が異なることで異形葉性が発現するとの観点から植物観察を続けています。

 そして今回、二週間前に観察したツツラフジの隣のアオツヅラフジでツツラフジ同様、花茎の有無に起因すると思える異形葉性を確認することができました。

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 アオツヅラフジの花茎を伴わない葉の形状は卵心形や広卵形ですが、花茎を伴う葉はどれもが葉の左右に切れ込みが入ります。

 枝の状況に応じて葉の大きさに差は見られますが、葉腋に花茎を伴うものは全て切れ込みが入ることを確認しました。

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 二週間前に紹介した、ツツラフジの異形葉は、花茎を伴う葉は心形で、花茎を伴わない葉は五角形とも見える不定形なので、「葉に切れ込みが入る」という観点からは、ツヅラフジとアオツヅラフジは、葉形変化の方向が逆ですが、花咲く枝とそれ以外の枝の生理条件に起因する異形葉との判断にほぼ間違いはないでしょう。

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  花茎の無いツヅラフジの葉    花茎のあるツヅラフジの葉

 但し、花茎の有無に起因する異形葉性発現に関する検証は、5月上旬からスタートさせたばかりで、「絶対間違いない」と言う為には、観察株数や植物種数が不十分です。

 今後はシマシャリンバイ、ツツラフジ、アオツヅラフジ、ツルウメモドキの観察株数を増やすことや、同様の現象を見せる新規植物種の探索を続けてゆきたいと考えています。


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 二週間ほど前、シマシャリンバイが花を咲かせた枝の葉とそれ以外の枝の葉に異形葉性が認められることを紹介しました。

 筆者は異形葉を、「異形葉性 オーキシン仮説」に基づいて観察していますので、シマシャリンバイの異形葉も、花を咲かせる枝とそれ以外の枝に於けるオーキシン活性の差と考えました。

 それ以降、他の植物でも同様の現象がみられるだろうと、様々な植物の観察を続けてきました。

 そして今回、小石川植物園の薬園保存園に植栽されたツヅラフジと分類標本園のツルウメモドキにそれらしく思う現象を認めましたので、以下にご紹介します。

 最初はツヅラフジの異形葉性です。

 ツツラフジは薬園保存園の一隅で支柱にツルを伸ばします。

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 上の写真でも分かりますが、ツツラフジ下部に付く葉は、左下写真のように五角形の変形とも言えるような形ですが、ツル上部の葉は、右下写真のように、ヤマノイモの葉にも似たハート形です。

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 筆者は2~3年前に、このツツラフジの異形葉性に気付いていましたが、その理由を理解することができませんでした。

 しかし今見れば、右上写真の葉の付け根には花茎が認められます。

 上記2枚の写真を見比べ、異形葉性発現理由は花茎の有無に関わる現象と考えました。

 上記写真は5月12日に撮影したものですが、その時ハート形の葉は小さく、葉の生育に伴い葉形が変化する可能性も考えられたので、継続した観察を続けました。

 そして昨日、以下の画像から、同じツルの根本と枝先に発現するツツラフジの異形葉は、花茎の有無に因るとの確信を得ました。

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 一枚で収めた、わかり易い写真が撮り難いので、もう一度典型的な、ツヅラフジの花茎に関わる異形葉を下に示します。

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 次に分類標本園のツルウメモドキの異形葉をご覧下さい。

 通常の枝に付く葉は以下の写真のように、先端が尾状に尖ります。

 但し、分類標本園では極めて強い剪定が行われていますので、この形態がノーマルであるか否かは、今後複数株のツルウメモドキを確認する必要はあります。

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 以下の写真は、基部に花茎が伸びた葉です。

 ツルウメモドキは雌雄異株ですが、花径を伴う葉は雌雄ともに先端が尖らず、全体が丸みを帯びた葉形を見せます。

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 分類標本園のツルウメモドキは毎年強剪定を受けますので、上記結果を鵜呑みにはできませんが、花径を伴う枝の葉と他の枝の葉の間に異形葉性が認められることに間違いはありません。


 以上のことから、筆者が従来観てきた、向背軸側に生じる異形葉性同様、花茎を伴う葉に認められる異形葉性も数多くの植物に発現している可能性が高いと考えます。

 振り返ってみれば、筆者が初期にイチョウの長枝短枝間で認めた異形葉性も、短枝には花が咲きますが、長枝に花は付きませんので、今回の観察結果と同じ現象を見ていたことになります。

 桃栗三年柿八年はよく知られた現象ですが、イチョウに於いても短枝が育つには一定の年月(樹齢)が必要です。

 イチョウは短枝だけに花を咲かせることから類推し、樹齢を重ねることによってオーキシン等の植物ホルモンバランスが変化する現象から、それら桃栗三年柿八年の現象を捉えれば、全てを無理なく理解できるように思えます。

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 令和を迎え、心新たに植物園通いを続けています。

 先週の土曜日はルーチンの観察が早く終わったので、久しぶりにのんびりと小石川植物園を散策しました。

 連休前に満開の花を楽しませてくれたトキワマンサクが花を散らし、緑の葉を茂らせていました。

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4月23日のトキワマンサク

 そのすぐ横で、シマシャリンバイ(植栽位置 B061001)が白い清楚な花を咲かせていました。

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 春は今年も「白い花の溢れる季節」へ移ろいつつあるようです。

 シマシャリンバイの花の撮影後に気付いたのですが、花のない隣の枝の葉に鋸歯があって、花を咲かせた枝の葉には鋸歯がないのです。

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 同じ株に鋸歯のある葉とない葉が同居し、異形葉性が認められます。

 すぐに、木全体の葉を確認する作業に取り掛かりました。

 どうやら、花が付く枝も、前年枝の葉には鋸歯がありますが、花が咲いた当年枝には鋸歯がないことが分りました。

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 しかし残念ながら、この日は、ここで閉園時間を迎えてしまいました。

 そこで再度、休園日の翌日、水曜日に植物園を訪ね、シマシャリンバイの異形葉性を確認する作業を行いました。

 以下の写真のように、花の咲く枝の葉の様子をデジカメで記録します。

 手が届く範囲の、花ある当年枝と前年枝の葉を19セット撮影し、その全てに、前年枝に鋸歯ある葉が付き、当年枝の葉は鋸歯がないことを確認しました。

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 比較対照として、花が付かない枝の当年枝と前年枝の葉を19セット確認し、その全ての枝に鋸歯がある葉を認めました。

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 以上のことから、シマシャリンバイに於いては、花が咲く枝に鋸歯のない全縁の葉が付き、花のない枝には鋸歯を持つ葉が付くことが確認できました。

 昨年「ヒヨドリバナは好奇心の庭に花を咲かせる」に記したように、花を咲かせた枝は、他枝と異なるオーキシン動態や受容体感受性変化などを生じている可能性があります。

 今回観察したシマシャリンバイに於いても、花を咲かせる枝は、枝の成長に栄養資源を向けるより、結実し子孫を残す方向へ生理代謝系が変化しているはずです。それに伴って枝の伸長を促すオーキシン活性が変化し、その影響を受けて異形葉が発現したと考えます。

 幼木や、強剪定後に出るヒコバエなど、オーキシン活性が亢進する枝に異形葉性が認められますが、樹種によっては、シマシャリンバイのように、花の枝と他の枝間にも、異形葉性が認められることを認識しました。

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 小石川植物園に本格的に通い始めて7年ほどが過ぎようとしています。

 その間に撮り溜めた画像は13万枚を超えて、従来からの保存方では、必要なときに必要な画像を取り出すことが難しくなってきました。

 そこで、画像名に直接、花、葉、枝などの語を入れ、画像を開かなくても内容が分かるように、画像を整理する作業を始めました。

 暇を見ながら作業を行っていますが、今日はマツ科画像の改名作業を行いました。

 ところが、以下のようなアカマツの画像を見ていて、ふとした疑問が湧いてきました。

 アカマツは、直接枝から2本セットの葉が出ているように見えます。

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 ところが実際は、アカマツは元枝から短い枝が出ていて、その短い枝に2本ずつ葉が付く構造です。

 そんなことを確認しながら、保存していた画像を整理しますと、

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 植物の枝と葉の基本的構造である、「枝は葉腋から出る」という原則を、アカマツの場合どう考えるべきか、という疑問が生じました。

 そこで、グーグルで「マツ 分枝」と入力し検索してみますと、

 ウィキペディア(Wikipedia)でマツ属を解説する「マツ」というページがヒットしました。

 その中の「葉」を解説した項に

 「マツの葉は子葉、初生葉、鱗片葉、尋常葉(針葉)の4種類に分けることができる。

 このうち、私たちが普段目にするのは尋常葉(針葉)と鱗片葉のみであり、子葉と初生葉は発芽直後のみ見られる。鱗片葉は葉に見えず、・・・」との記述を見つけました。

 更に、その項の「鱗片葉」の説明は、

 「枝(長枝)を埋め尽くすように生えている三角形の鱗のようなもの、一見すると葉に見えないが葉の一種。マツ属を表す特徴の一つ。」とありました。

 そこでもう一度、PC中の以下のような新芽、通称「みどり」と呼ばれる部分の画像を確認しますと、

 春になって伸び始めた新芽(みどり)に、赤褐色のピラピラした薄膜状のものが見えます。

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 そして、その薄膜状のものの内側から緑の針葉(正確には短枝とその先の針葉)が伸び出てゆきます。

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 つまり、ウィキペディアの解説に記載された、「三角形の鱗のようなもの」とは、この「ピラピラした薄膜状のもの」のことなのでしょう。

 この「薄膜状のもの」が、「一見すると葉に見えないが葉の一種」ということのようです。

 また、グーグル検索で見つけた、北海道大学露崎史朗さんの「マツ科」ページの分類の項に、

 1. 長枝と短枝がある。長枝には膜質の鱗片葉のみがつく
              __ Subfamily Pinoideae = Pinus

  との記述を見つけ、あわてて図鑑をめくってみると、

 マツ科
  A. 長枝と短枝がある
   B. 葉は線形で、長枝では単生し、短枝では多数束生し、冬に落葉
     する。 カラマツ属 Larix

   B.葉は鱗片葉と針形葉と2型ある。長枝には鱗片葉だけがあり、
     短枝には基部に鱗片葉が、頂部に針形葉が2-5個束生し、
     常緑である。 マツ属 Pinus

  と記されていました。

 え~ そうなんだ!

 マツ属に葉が2種類あるのは当前のことだったようです。

 ほんと、知りませんでした ・・・
 
 てことは、これって、異形葉性があるって言えそうですね?
 
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