---   全国のヒガンバナが、彼岸に合わせて花を咲かせる理由  ---


 9月中旬にヒガンバナを見に、東北を一周してきました

 筆者がホームグラウンドとしている小石川植物園で、今年最初にヒガンバナの開花を認めたのは、9月7日でした。

 それから約一週間を経た9月13日、ヒガンバナの開花は群落のほぼ全ての株に及んでいました。

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 筆者が旅に出たのは9月18日でした。

 その日、茨木県南部の西蓮寺、茨木県北部の常陸太田市、福島県南部のいわき市で満開のヒガンバナを見ることができました。

  イメージ 3 西蓮寺
    常陸太田市 イメージ 4
            いわき市 イメージ 5
 
 
 そして翌日の9月19日、福島県北部の福島市内、宮城県南部の柴田町、

        イメージ 6 福島市内
          柴田町  イメージ 7
 
 
 更には、太平洋側よりも雪深い山形市と寒河江市

      イメージ 8 山形市
         寒河江市 イメージ 9
 
  更には秋田県大潟市でも満開のヒガンバナに出会うことができ、その翌日、青森弘前市の最勝院でもヒガンバナは満開でした。

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 大潟市              弘前市

 今回の旅で、ヒガンバナは東京も青森も全て同時期に開花する事実を確認することができました。

 これは非常に興味深いことです。

 例えば、日本で開花現象が最も詳細に調べられたソメイヨシノと比較してみると、

 ソメイヨシノは通常3月下旬ごろに東京で開花宣言が出た後、

 一ヶ月以上をかけて北上し、5月の連休頃に弘前城で桜の見ごろを迎えます。

 しかし、ヒガンバナの開花は東京も弘前も同時なのです。

 そこで、「ヒガンバナ 開花」でネット検索し、最初にヒットした日本植物生理学会のQ&A「彼岸花はどうやって季節を知るのですか?」を閲覧し勉強させてもらいました。

 そこに書かれた内容は以下のように要約することができます。

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 つまりヒガンバナは9月に花を咲かせた後、10月以降に葉を広げ、

 球根に養分を蓄え、低温に遭遇するバーナリゼーションを経て、

 4月頃に花芽の分化が始まり、6月、8月頃の雌ずいや花粉形成を経て、

 再び9月に開花するというサイクルを繰り返すようです。

 前回のブログに記したように、サクラは秋には花芽を作り終え、葉で作られるアブシジン酸が花芽に送られて開花を抑制しています。

 そして冬季の低温遭遇を経た後、日々の温度の積み重ねによって開花に至るとの理論に基づき、サクラの開花予報が出されています。

 一方ヒガンバナは、4月に花芽分化が始まり、その後葉が枯れますから、アブシジン酸の関与を考慮する必要はありません。

 しかし低温刺激を感知する器官は葉ではなく、種子胚とか芽生えの茎頂などの分裂組織だそうですから、どの部位でヒガンバナが低温刺激を感知しているかの考察は必要でしょう。

 また、葉が枯死したあと、高温の夏季が続きますので、ヒガンバナにサクラのような積算温度で開花に至る理論は当てはまりません。

 日本植物生理学会のQ&Aでは雌ずい形成の適温は20℃以下なので、そのことが9月にヒガンバナの開花が始まる理由と説明しています。

 そこで、今回見て来た東北地方と東京の気温変化を調べてみました。
 
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 このグラフを見る限り、今回確認した東京と東北地方の同時開花を説明するのは難しそうです。

 しかし、ヒガンバナが温度を感知するのは球根の筈ですから、地温は平均気温ほど変化しない可能性があります。
 
 常識的に考えて、筆者が継続的にヒガンバナを観察している小石川植物園の該当エリアである、大イチョウが葉を茂らせた木陰の地温が30℃を超えることはあり得ないでしょう。

 また、日本植物生理学会のQ&Aの回答者の論文を確認していませんので、何とも言えませんが、ヒガンバナの花芽分化の適温が20℃以下というのは、そのような時間帯が数時間あれば良いのかもしれません。

 参考の為に、最低気温の推移も調べてみました。


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 ここまでの推論に、筆者が日本全国70数か所でヒガンバナを見て来た印象などを重ね合わせ、

 日本全国の殆ど全てのヒガンバナは、田の畔や川の岸辺など、地温が上がりにくい場所に群生していることに気付きました。

 しかしそれだけでは、東京以北のヒガンバナがほぼ同時期に開花する説明としては不十分です。

 もう一度、日本植物生理学会のQ&Aを見直してみますと、

 「雌ずい形成期に達すると、それまでの発育を促した高温(25〜30℃)ではかかえって発育が抑制され、適温は20℃付近に低下します。」と記されていますが、

 地中の球根から花茎が伸びた後の、開花適温が20℃以下とは記されていません。

 上の記述だけでは分かり難いと思いますので、昨年小石川で9月10日に観察した、ヒガンバナ花芽の様子を以下にご覧頂きます。

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 つまり、確認の必要はありますが、花芽発育と開花は同義ではなさそうです。

 花芽が形成されて花茎が伸びたとしても、開花までにタイムラグがあるように見えます。

 だとすれば、一つの推論として、ヒガンバナは花芽を伸ばした後、日照時間を感知して開花に至る(短日植物)だろうと仮定すれば、

 筆者が今回の旅で確認してきた、東京も青森県弘前市でも、ヒガンバナは同時期に開花するという事実を矛盾なく説明できる可能性があります。

 更には、ヒガンバナの開花に太陽光が大きく関与していればこそ、花の季節に、生育地は除草が求められるのかもしれません。

 勿論、地表温の計測、花茎の伸長と開花時期の検討等の、更なる注意深い観察が必要で、結論とするには証拠が不充分です。

 しかし今回一旦、現時点での、東北地方に於けるヒガンバナ観察に因る、ヒガンバナ開花に関する考察をレポートしておくことにしました。

 尚、今回の記事の作成に当たり、成田廉司様の「くまもとの自然と畑楽」を参考にさせて頂きました。 ここに感謝申し上げます。

 尚、筆者は単独で考察を行っており、何かの落とし穴に嵌っている可能性があるかもしれません。

 筆者は証拠が出そろうまで探求を続けます。

 論理的矛盾点、疑問点などのご指摘を頂ければ幸いです。


筆者のホームページ 「PAPYRUS