「異形葉性 オーキシン仮説」の下に、小石川植物園でヤマグワの異形葉性観察を行いましたが、具体的に何かを言えるような結論を得ることはできませんでした。
当然でしょう。
今まで、クワの葉の不思議に魅せられて多くの人が観察を重ねても、仮説すらない現象に、定年後の素人が、数本のクワの葉を観察たぐらいで、そう簡単に理解できるはずなどないとは思います。
今まで、クワの葉の不思議に魅せられて多くの人が観察を重ねても、仮説すらない現象に、定年後の素人が、数本のクワの葉を観察たぐらいで、そう簡単に理解できるはずなどないとは思います。
はたして吉と出るか、撃沈されるか。
さて、挑戦者は次のように考えました
● 今までの観察から、幾つかの樹種に生じる異形葉(切れ込みの入っ
た葉)は、ヒコバエや苗のような、幹や枝が伸長成長する
タイミングでの発現頻度が、成木に比べ高い。
タイミングでの発現頻度が、成木に比べ高い。
● 樹齢の推移に即して、切れ込みの入った葉(分裂葉)と無い葉(無
分裂葉)の比率に変化が生じるように思える。
分裂葉)の比率に変化が生じるように思える。
● 枝の伸長成長作用は、枝毎の微小環境条件によって異なるはずで、
成熟木でも、同じ木に分裂葉と不分裂葉が共存することはあり得
る。
る。
● つまり、風などで損傷を受けた枝の再生時などには、古木に分裂葉
があっても不思議ではない。
● 一方、様々な環境因子の影響を受けるフィールドでも、複数の木
で、木全体の分裂葉と無分裂葉の比を測定し統計処理を行えば、
樹齢の推移に応じた異形葉の発現状況が明らかになるかもしれな
い。
で、木全体の分裂葉と無分裂葉の比を測定し統計処理を行えば、
樹齢の推移に応じた異形葉の発現状況が明らかになるかもしれな
い。
● とりあえず、ヤマグワを対象に、樹齢に応じた分裂葉と無分裂葉の
比を観てみよう。
ということで、ネット検索で「ヤマグワ 東京 公園」と入力し、都内の公園に植栽されたヤマグワを探しました。
目黒の林試の森や茗荷谷の教育の森公園など56ヶ所がリストアップされましたが、練馬区や清瀬市、八王子市などの都内西部にヤマグワの植栽頻度が高いことが分かり、それらの地域に的を絞った調査を行うことにしました。
16か所で予備調査を行い、小石川植物園を含めた8か所で24株のヤマグワの葉の形状と対象木の幹や枝の周囲長(≒樹齢)を計測しました。
実施地と測定株数
小石川植物園3株、教育の森2株、目白の森1株、武蔵野大学1株、
東村山公園1株、八国山緑地1株、小宮公園3株、長池公園12株、
ほとんどの方は、測定方法などに興味はないでしょうから結論を先に説明します。
24株のヤマグワで3313枚の葉形を識別し、その葉を付けた幹や枝の周囲長との相関を求め、以下のようなグラフを得ることができました。

縦軸は各々のヤマグワで観察した、無分裂葉比(無分裂葉/判定全葉数)です。 平均値0.53 (73.2/138.0)
横軸は葉形を判定した葉が付く幹や枝の周囲長で、樹齢を推測します。
R2=0.63という、かなり高い相関を認めました。
付記する調査方法の改善で、さらに高い相関が得られるだろうと考えます。
つまり、若木では、切れ込みの入った分裂葉の比率が高く、樹齢を重ねるにつれて切れ込みのない不分裂葉の比率が高くなることが明らかとなりました。
周囲長が20㎝を越え30㎝となる辺りで、葉形の構成に質的な変化が生じるように見えます。
(注:周囲長が1mを越えるデータを除外しても近似曲線とR2値に大きな変化は見
られなかった為、教育の森の周囲長158.5㎝株と武蔵野大学210㎝株は、作画
上の理由で、グラフ作成時に除外しています。)
今回のヤマグワ異形葉性調査の結果をまとめますと
樹齢が若いときには枝の伸長成長が活発であることが推測されます。
樹齢の増加と共に木全体としての、枝の伸長成長活性が低下すると仮定すれば、
枝の伸長成長を促進させる植物ホルモン(主にオーキシン)の活性が高い、若木の枝に生じる葉は、分裂葉の比率が高く、樹齢を重ねた木の枝の伸長成長活性は低下し、無分裂葉の比率が高まる。
以上のことから、今回の調査結果は「異形葉性 オーキシン仮説」を支持すると判断しました。
一方、ヤマグワとマグワでは動態が異なる可能性も考えられます。
測定対象木は花を確認し種を特定すべきでしょう。
等々、幾つかの問題点はあるものの、とっかかりの調査としては、まずまずの結果と安堵しています。
付記:調査方法
測定対象木の下から、枝を見上げ、デジカメで葉の様子を撮影し、PC画面上で葉形を判定し、分裂葉は△、無分裂葉には〇を付しました。
下に教育の森のヤマグワの画像を例示します。
葉形判断は左下画像のように、葉に写る影の形も考慮しました。
無分裂葉は葉形全体が確認できなければ判断保留としました。
分裂葉は欠けた部分が一部でも写っていれば分裂葉と判断しました。
上記内容から、調査方法にバイアスが掛かる可能性は否定しません。
また、木の内側にある枝を撮影した場合、葉の重なりの為に判定数が減少し、相対的に外周部での判定が多くなりました、その意味でもバイアスの掛かる可能性があります。

同じ木の主幹とヒコバエで分裂葉と無分裂用の構成が異なるように、枝の伸長成長は枝毎に異なるはずですから、以下の写真のように途中で四つに分かれる場合は、測定対象とする幹の周囲長を計測しています。
その意味で、分析に用いた周囲長の数値は、木本体の樹齢をそのまま反映したものではありません。

撮影はカメラの最大画素数で撮影し、判定時に見易いように、得られた画像を画像ソフトで露出等を補正しました。
下の写真の赤→を付けた葉のように、明らかに外傷による葉の欠損と分かるものは、状況に応じて適宜判断を下しました。
その上で、青矢印の葉のように、判断に迷う場合は全て、集計から除外しました。

以上のことから、ヤマグワの葉に一ヶ所でも切れ込みのある分裂葉と切れ込みのない無分裂葉の発現頻度は、夫々の葉を付けた幹や枝の太さと相関関係にあることが確認できました。