小石川植物園のF030508の位置のヤマグワ(前ページを参照して下さい)は、西側に大きなケヤキが並ぶ場所に育ちますので、光を求め、枝を東へ向ける樹形となっています。
(注:小石川植物園の幾つかのヤマグワには名札がありません。また筆者の配
置図にも未記載です)
樹形から、東の方向に枝を伸ばそうとする力を感じます。

幹の周囲に巻尺を当てますと、87.8㎝という結果が得られました。
それなりの樹齢を経た木であることが分かります。

枝に茂る葉は、ありふれた緑の楕円形で、葉の縁に粗い鋸歯がありますが、葉の周囲に虫食い以外の凹凸は見られません。

更に観察しますと、枝先に切れ込みのある葉を見つけました。
先ほどの葉と比較すると、枝から出る葉と次の葉の間が長く見えます。
別の言い方をすれば、枝の伸びかたに勢いが感じられます。

一方、赤い矢印で示したように、密に葉が茂った枝に、切れ込みのある葉と無い葉が混じり合っていました。
この状況から類推すると、クワの枝の形状に着目したアプローチをしても「異形葉 オーキシン仮説」を証明するのはかなり難しそうな気がします。

次に、名札の無いF050308のクワの葉を観察しました。
このクワはモッコクの斜め前に位置しますが、2~3年前に実生で生えた木が切られ、その切り株からヒコバエが伸びだしています。
花が確認できませんので、ヤマグワかマグワかの判別はできませんが、周囲の状況から考えてヤマグワの可能性が高いと思われます。

このクワの幹回りは2.8㎝でした。
尚、この巻尺の150㎝表示は左からの3.0㎝に該当します。

このクワの全ての葉に切れ込みが入っていました。

続いて、名札の無いF060510のヤマグワの葉を観察しました。
この木は、雌花の長い花柱の先端が二裂します。
更に、葉の先が尾状に尖ることからヤマグワと判断しました。

この木の幹回りは34.5㎝です。

全ての葉が周囲に粗い鋸歯を持つ卵形で、切れ込みが入る葉は一枚も見出せませんでした。
上記3株のクワ以外にもG090706の位置にクワが育ちますが、他の木が邪魔をして、葉の観察が十分に行えませんので、以上の3株で、小石川植物でのクワの観察を切り上げることにしました。
観察結果としては
① 2~3年生の若いヒコバエの葉は全てに切れ込みを認めた。
② 幹回り34.5㎝の木は、全ての葉に切れ込みがなかった。
③ 幹回り87.8㎝の木は、ほぼ全ての葉に切れ込みがなかったが、
伸びを認める枝や一部の枝先に切れ込みがある葉を認めた。
となります。
上記結果をまとめますと。
若い木に切れ込みが入る葉が付き、樹齢が進むと切れ込みの無い葉を付ける傾向がある。
また、樹齢が進んだ木でも、一部の枝に切れ込みのある葉が付くことがある。
となります。
今回「クワの木の異形葉性発現にオーキシンが関わる」の仮説の下に観察を行いましたが、
伸び盛りの若いヒコバエの葉全てに切れ込みが入ること、樹齢が進んだ木に切れ込みの無い葉が多く、一部に切れ込みがある葉も出現する、は仮説の想定範囲内です。
とは言っても、小石川植物園内のクワだけを観察していたのではこれ以上の進展は望めそうもありません。
そこで、東京都全域に観察域を広げ調査を実施しました。
次回はその内容をご紹介します。