---イチョウの葉は雄雌で異なるか---
イチョウは雄の木と雌の木があり、雌には銀杏(ギンナン)の実が稔り、雄の木には実がつきません。
イチョウは公害に強く、条件の悪い土地にも育つので、各地に街路樹として植栽されますが、独特の臭いがあるギンナンは道路を汚すので、街路樹には実が稔らない雄株が植えられています。
知人との話題の中で、「イチョウの雌の葉は丸く、雄の葉は切れ目が入っているので、葉の形で見分けることができる」という話が出ました。
ホント?と思いましたが、百聞は一見に如かずですので、早速イチョウの葉を確認しに行ってきました。
小石川植物園の正門を入って直ぐの左手に三本のイチョウが枝を広げています。

正面の木とその後が雄株で、トイレ側の一本が雌株です。
雌株の枝には実が付いていました。
そしてその葉を見ると、確かに葉には切れ目がなく、丸い扇形をしています。

しかし、枝先に付いた葉を見ると

葉の中央に切れ込みが入っていました。
また、根本から直接立ち上がった数本の若い枝の葉を確認すると

その枝の葉は、同じイチョウの葉とは思えない程に切れ込みが入った形をしていました。

この葉を見た限りでは、「イチョウの雌株の葉は丸い」とは言えないと思えます。
次に、その隣の雄株の葉を確認しました。
枝先に、枯れ残った雄花が見えています(写真左下)。
幸いにも4月上旬に、この木に咲いた雄花を撮影していました(右下)。

しかし、上の二枚の写真の葉を見比べても、雄株であるこの木の、花の付く枝の葉に切れ込みがあるようには見えません。
この状況では、「イチョウの雄株の葉には切れ目がある」と言えないことになります。
更に、この木の根元からも、一本の枝が直接立ち上がっていて、その若い枝の葉は、先ほどの雌株同様に、多くの切れ込みが入っていました。

小石川植物園には、ここ以外にも複数のイチョウの木があります。

その苗の葉を確認すると、全ての葉に明確な切れ込みが入っています。

もし、イチョウの雌の葉が丸く、雄の葉に切れ込みがあるのであれば、ここの数百株にも及ぶイチョウの苗は、常識的には半数が雄株の葉の特徴を、半数は雌株の葉の特徴を持つはずです。
どうやら、イチョウの雌雄を葉の形で見分けられるというのは、単なる思い込みか、未確認の伝聞情報に過ぎないようです。
もしかすると、実がなるような、成熟したイチョウの枝の葉を見て「雌株の葉は丸い」、実が付かない若いイチョウの葉を見て、実の付かない木=雄株と判断し、「雄株の葉には切れ込みがある」と思い込んだ話が広まったのかもしれません。
これと似た話が、ヒイラギでも知られています。
ヒイラギの木は若い時には、トゲトゲの葉を付けますが、木が成熟すると丸い葉を付けるようになります。
このような現象は異形葉性と呼ばれています。
イチョウが見せる、丸い葉と切れ込みのある葉も、木の枝の成長に伴う異形葉と考えればよいのだと思います。