葉序の進化を考察した2019年4月のブログで、「ハナヒョウタンボクの特徴を説明する予定」と記しましたが、2020年はコロナ禍で小石川植物園が閉園となり、準備を進めることができませんでした。
今年も昨日から小石川植物園は臨時休園となりましたが、必要な資料を昨日までに揃えることができましたので、一昨年の約束を果たしたいと思います。
小石川植物園の正門を入ると、整った姿のアケボノスギ(メタセコイア)が出迎えてくれます。
そのアケボノスギの裏側で、名札を付けたハナヒョウタンボクが葉を茂らせています。
このハナヒョウタンボクは毎年4月中下旬から5月上旬ごろにかけて花を咲かせますが、今年は開花が異常に早く、この木の2021年の初開花観察日は4月1日でした。
詳細に観察すると、
花の形は、特徴的な2唇形で、花の咲き始めは白いのですが、次第に黄色く変化してゆきます。
花は上唇と下唇と呼ばれる2種類の花弁で構成され、下唇は下向きに伸びて、先端が4つに分かれる上唇は上向きに広がります。
上唇と下唇の間から5本の雄蕊と1本の雌蕊が花弁の外へ伸び出します。
上唇と下唇の間から5本の雄蕊と1本の雌蕊が花弁の外へ伸び出します。
右下写真のように、枝へ左右対象に付く葉(対生葉序)の脇から伸びる花柄の先に、2唇形の花が2個ずつ咲きます。
花柄の長さは2~4㎜と短いので、枝に沿って花が整然と咲き並ぶように見えます。
線状披針形の苞は長さ3-5㎜で、花が開くころに落ちます。
小苞の長さは1.5-2㎜で、下部は合着します。
萼片は長さ2-3㎜で5つに分かれています。
小苞の長さは1.5-2㎜で、下部は合着します。
萼片は長さ2-3㎜で5つに分かれています。
ハナヒョウタンボクの蕾は直径2㎜程の円柱状ですが、この蕾が二つに分かれて花が開きます。
蕾のときにハナヒョウタンボクを観察すると、短い花柄の先に子房を分けて2つの花が付く様子がはっきりと分かります。
そして、この特徴こそが、類似する他種からハナヒョウタンボクを識別する際の主要な手掛かりとなります。
ハナヒョウタンボクの蕾の写真を見ると、花柄に付く2つの花の子房は分離していますので、秋に稔る実はヒョウタンのように2個並びますが、合着することはありません。
枝の実は一つだけのことも多く、受精しなかった子房に養分を供給しないシステムを備えているか、小鳥たちが頻繁に訪れるのか、あるいはその両方なのかは、今後の観察課題となっています。
ハナヒョウタンボクはスイカズラ科に分類される落葉小高木ですが、小石川植物園のハナヒョウタンボクは冬に全ての葉を落としません。
2月下旬から3月上旬ごろ、ハナヒョウタンボクは新しい枝を伸ばし、緑の葉を広げます。
前年枝の葉腋から新しい枝が伸び出します。
葉は倒卵形か倒披針形で、葉先は尖り、基部がくさび型で、枝や葉柄や葉脈に毛が密生します。
上の写真のように、若い枝は毛で覆われますが、数か月もせずに毛は消失し、枝は年を越すと縦線が現れ、古木になると樹皮は縦に剝がれ落ちて、灰褐色の幹を見せます。
ハナヒョウタンボクは、伸びた枝に多くの葉を付けますが、次の年に、それら葉腋から側枝を数多く伸ばしますので、元枝はそれらを支え切れずに、倒れ込むような形になります。
倒れ込んで横向きとなった枝の、陰の部分に位置する側枝は枯れ落ち、光を受ける場所の側枝からは、次の年に新しい枝が伸びだします。
その作業が毎年繰り返されますので、ハナヒョウタンボクは横向きに枝を広げ、こんもりとした樹形を作ってゆきます。
ハナヒョウタンボクの特徴 枝の伸長とオーキシン活性
上記の説明のように、ハナヒョウタンボクが伸ばす新枝は、数多くの葉が間を空けて並ぶ長さですが、それと比較し、以下の写真のヤブツバキが伸ばす新枝の長さは、4~5枚の葉が付く程度でしかありません。
つまり、ハナヒョウタンボクは種の特徴として、枝を伸ばす機能(オーキシンの作用)が他の樹種よりも強いだろうことが推測できます。
その上で更に、以前レポートしたハナヒョウタンボクF111002株のように強選定を受けた個体は、地表部と根系のバランスが大きく崩れることで、オーキシン活性が異常に更新し、通常では見せない三輪性葉序や四輪性葉序を発現させるのだろうと考えています。
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