好奇心の植物観察

定年退職後に木の観察を始め、草にも手を広げました。楽しい日々が過ぎてゆきます。 (旧ブログ名 樹と木のお話)

カテゴリ: サルスベリ

 
 約一ヶ月に亘って、サルスベリを楽しみました。

 数回に亘って、このブログでも、その様子をご紹介しました。
 
 たった一ヶ月あまりの観察でしたが、既に葉も落ち始め、調べ尽くせなかったことどもが山のように残っております。

 しかし、来年の春を俟つと言えば鬼に笑われますので、この辺りで一度、頭の整理と、サルスベリの葉序に関する観察事項をまとめておくことにします。
 
 
 サルスベリの葉の付き方

 サルスベリが幹から枝を出した当初は旋回葉序という特殊な葉の付け方を見せます。
 
イメージ 1 写真①
 
 
 このとき、枝を挟んで配置する、葉の上下へのズレが縮小する枝も散見され、そのような枝では十字対生が見られます。
 
イメージ 2 写真②
 
 
 そのような旋回葉序が、地面と水平方向に枝を伸展させると、コクサギ型葉序と称する葉の並べ方を見せるようになり、時に対生葉序を見せる枝も現われます。
 
イメージ 3 イメージ 4
   写真③                写真④
 
 枝が肥大成長すると、写真⑤のように、サルスベリの枝で、上下に位置する葉の相対角度が増加してきます。

 この現象は、サルスベリの葉柄が極めて短いか、葉柄の無い葉が存在する特性によると考えられます。
  
イメージ 5 写真⑤
 
 
 出芽時より明らかに太くなった枝に於いては、一ヶ所の節に複数枚の葉が付く、写真⑥のような輪生葉序が観察されるようにもなります。
 
 葉が一ヶ所に集約しきれない、写真⑦のような輪生葉序への移行型といえる形もしばしば観察されます。
 
イメージ 6 イメージ 7
   写真⑥                 写真⑦
 
 
 ある程度肥大した枝では、ごくまれに写真⑧のような螺旋葉序を認めることもあります。
 
イメージ 8 写真⑧
 
 
 旋回葉序の構造は、特定の方向から見ると、通常の互生葉序を見せることが確認されています

 不思議なことに、実際のサルスベリで通常の互生葉序を見ることは極めてまれですが、写真⑨のような互生葉序が無い訳ではありません。
 
イメージ 9 写真⑨
 
 
 以上、サルスベリの葉の付き方を実際に観察し、確認できた葉序は次の6種類となります。

 1.旋回葉序
 2.螺旋葉序
 3.コクサギ型葉序
 4.互生葉序
 5.対生葉序(十字対生)
 6.輪生葉序
 
 と言うことは、サルスベリは現在知られている植物の葉序(葉の並べ方)の全てのパターンを網羅していることになります。

 
 旋回葉序やコクサギ型葉序の植物の種類は極めて限られるので、葉序の全パターンを網羅する植物は世界で唯一、サルスベリだけかもしれません。
 
 
 少なくとも、旋回葉序は全ての葉序へ変わり得るキャパシティーを持つことだけは確かなようです。
 
 
 植物進化のどこにサルスベリが位置するかを筆者は理解していませんが、葉序に関してだけから言えば、サルスベリは全てに繋がる、植物進化のハブ空港のような位置を占めているのかもしれません。
 
 
 
 そして、全パターンの葉序を網羅する植物があることを確認したのは筆者が世界で初めてだと思いたい。  y(^ー^)y ピース!
  
 
 どんな些細なことでも「世界初」などと言える可能性があれば、本当に愉快なことです。   ♪♪v(⌒o⌒)v♪♪ イエーイ 
 
 なんだか、新しい星座を発見したような、そんな気分です。
 
 ホント、オプティミスティック。
 ホント、私も長生きしそうです。
 
 
 上記内容は、主に東京都板橋区高島平のサルスベリの街路樹を路上から観察したものです。
 
 1.観察対象は剪定が繰り返し加わった街路樹であること。
 2.下部の枝のみを観察したこと。
 3.観察対象の新しい枝は、剪定の影響下で発芽した可能性があること。
  
  などの条件を考慮する必要があります。
 
 
筆者のホームページ 「PAPYRUS

 
 今回、更に興味深いものを観察しましたので、引き続き、サルスベリの葉序の話題をご紹介します。

 サルスベリの葉の並び方を写した写真①と説明用の写真①’をご覧下さい。
 
イメージ 1 イメージ 2
   写真①                 写真①’
 
 ほぼ四角い断面を見せるサルスベリの枝を中心に、赤●、黄●、ピンク●の相対する葉が、上下にズレながらペアとなり、そのペア毎に約90°の角度で旋回しながら枝先へ連なり、旋回葉序そのもののように見えます。
 
 しかし、写真①’で示すように白○の葉が一枚余計です。

 但しこれも、視点を変えて見ると、

 
イメージ 3 写真①’’
 
 
 見事な螺旋葉序を確認することができました。

 ところで、通常は旋回葉序が螺旋葉序に見えることはありません。

 サルスベリの一般的な旋回葉序の形を写真②でご覧ください。
 
イメージ 4 写真②

 
 写真②で、葉①から葉⑨までを見ますと、葉①→葉②→葉③までは時計廻りの螺旋状コースが得られます。
 
 しかし、その上の葉④へは時計廻りだと270度のルートを取らねばならず、不自然です。

 それでは、葉③から反時計廻りで葉③→葉④→葉⑤と廻っても、今度は葉⑤から葉⑥へのルートで再び向きを変えなければなりません。
 
 このように、通常の旋回葉序では、葉の位置を連続した一本の螺旋で辿ろうとすると、極めて不自然に思えます。 (ご参考:旋回葉序
 
 では、何故写真①の旋回葉序が螺旋葉序に見えるのでしょうか。

 
 1. 赤●、黄●、ピンク●ペアの葉の角度が180度以下に狭まっている。

 2. 全ての葉の上下の間隔がほぼ均一である。
 
 3. 黄●からピンク●への開き過ぎた空間を埋めるように白○葉が補填   されている。
 
 写真①では、旋回葉序と見える枝に、上記1~3の変化を認めました。

 勿論、この樹の他の枝は、地上から肉眼で観察した限り、全ての枝が通常の旋回葉序でした。
 
  この枝を見付けてから、他の樹にも同様の枝がないかと探してみると、
 
イメージ 5 写真③ 
 
 
 写真③のように、葉0から葉8へと枝を三周しながら、葉を8枚並べる螺旋葉序を新たな樹で見付けることができました。

 この樹も、写真②の樹同様に、他の枝は通常の旋回葉序を見せていました。
 
 そして、10月初旬にコクサギの旋回葉序が互生葉序に見えることに気付いてから、サルスベリで探し続けていた、上空から見ての互生葉序をやっと見つけ出すこともできました。
  
イメージ 6 イメージ 7
   写真④                 写真⑤  
 
 しかし、このことが、以前のブログで述べた、サルスベリの枝に天地があろうことの否定には繋がらないと考えます。
 
 
イメージ 8 写真⑥
 
 今回、偶然見つけた写真⑥の、二枚繋がったサルスベリの葉が例外事象であることのように。
 
 
 植物の観察は、常に新しい発見や気付きをもたらしてくれます。
 
 しかし、その内容が偶発的な「たまたま」なのか、普遍的な現象なのかは、数多くの個体を、偏りなく見続けて判断せねばと、改めて肝に銘じました。
 
 
 このブログ内容の「思い込み」や「偏り」などに気付かれましたら、忌憚のないご意見を頂ければ幸いです。
 
 
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 サルスベリの枝が出芽した当初は旋回葉序を示します。

 
 旋回葉序とは筆者の造語で、写真①のように枝を中心に相対する葉が上下にズレながら配置され、そのようなペアの葉が約90°旋回しながら枝先へ連なるような、葉の立体構造的配置で、旋回葉序が地面と水平になった時にコクサギ型葉序が現れます。

 他の樹木では、主にコクサギやネコノチチ、ヨコグラノキなどで観察されています。

 但し、サルスベリでは写真②のようにペアをなす葉の、上下へのズレが小さい場合や、ペア毎の旋回角度が90°より小さい場合など、多彩な変化が認められます。
 
イメージ 1 イメージ 2
   写真①                   写真②
 
 
 このような旋回葉序の枝が、地面と水平方向に伸びたときに、葉は効率よく太陽光を受ける為に葉柄を曲げて、葉の表面を上空に向けます。

 このような枝を上から見下ろすと、写真③のように枝の両側へ交互に葉が連続して二枚ずつ並ぶように見え、これをコクサギ型葉序と称します。

 但し、サルスベリでは葉柄が短い樹が多いので、その場合には写真④のようにコクサギ型葉序の特徴が不明瞭となる場合があります。
  
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  写真③                  写真④
 
 
 旋回葉序の樹木は、枝が水平方向に伸びた時は、通常コクサギ型葉序を見せますが、サルスベリでは、写真⑤の対生葉序、写真⑥の輪生葉序などの多彩な変化を見せることは、以前のブログでご紹介した通りです。
 
 
イメージ 6 イメージ 7
   写真⑤ 対生葉序            写真⑥ 輪生葉序
 
 筆者は、サルスベリが多彩な葉序の変化を示す理由の一つは、その葉柄の短さ、あるいは葉柄が殆ど認められない特性にあると考えました。

 サルスベリは枝が太くなると、葉柄を曲げてコクサギ型葉序を維持できなくなり、相対する葉の間隔を詰めて対生葉序、ペア毎の距離を詰めて輪生葉序に変化するとの想定で観察を行いました。
 
 しかし今回、高島平でサルスベリの輪生状葉序を集中的に観察した結果、殆どの輪生状葉序が3枚葉で構成されていることが判明しました。

 3枚葉の輪生は、上記の、ペア毎に距離を詰めて変化する想定では説明がつきません。
 
 
 しかし、回答のヒントが、すぐに周囲の枝から提供されました。

 
イメージ 8 写真⑦
 
 写真⑦の赤線で囲んだ3枚の葉は輪生状の形態を見せていますが、視点を変えると、
 
イメージ 9 写真⑦’
 
 写真⑦’で、赤●、黄●、桃●の各々の葉は枝を中心として対をなし、しかも対の葉は上下にズレてペアとなり、そのペア毎に90°旋回しています。

 つまり、黄●対の葉の相互の距離こそ離れていますが、これは旋回葉序そのものです。

 
 同様の形態を随所に見かけました。
 
イメージ 10 イメージ 11  
  写真⑧                  写真⑧’
 
 写真⑦、⑧のように、黄●の対をなす葉の間隔が開いて、一枚ずつ隣接する赤●ペア、桃●ペアの対生状の葉へ接近すると、
 
イメージ 3 写真⑨
 
 
 写真⑨のような状況となり、最終的に3枚の葉が同じ節から出るように見える、輪生葉序の形態に至ると考えます。 
 
 
 このように、高島平で観察したサルスベリの輪生葉序の多くは、旋回葉序のペアが単純に距離を詰めるのではなく、ペア毎の対をなす葉が一枚ずつ、隣のペアの葉へ分離接近することで形成されると推測しました。
 
 このような変化が、発芽した枝の旋回葉序から、枝の生育肥大に伴って起きるのか、あるいは枝が発生した時に、既に葉の配置が定まっているのかは不明です。
 
 しかし、旋回葉序で発芽した枝は、成長と共にコクサギ型葉序まで同じ過程を歩むと推測しますが、そこから対生葉序となるか、輪生葉序となるかは枝毎に異なる特性のように見えます。
 
 何故なら、旋回葉序でペアとなる葉が枝の上下へ分離して形成されると推測する輪生葉序は、外部要因の影響とは考え難く、枝が肥大する前からプログラムされている可能性が高いからです。
 
 
 そうであれば、若い枝と肥大した枝で、発現する葉序に差を認めるのは何故なのでしょうか?
 
 謎が深まります。
  
 と言うより、まだまだ観察が足りないのです。
  
 この時期に出芽枝を観察すること自体に無理があるかもしれません。
 
 
イメージ 12
 
 この疑問を解明するには、既に季節は遅すぎるようです。
 
 颱風が過ぎ去れば秋は更に深まり、落葉の季節がやってきます。
 
 サルスベリの旋回葉序の真実を見定める作業は、年が明けてからのお楽しみにしたいと思います。
 
  
 年が明けてからなどと言えば鬼が笑いますが、こりゃしばらくは、私もボケる訳にはいかないようです。
 
 
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 サルスベリを観察して「サルスベリの葉序(葉の付き方)の変化は、枝の太さと相関している」ように見えたので、そのことを確認する為に、高島平の並木で実際にサルスベリの枝を測り、「サルスベリの対生葉序は、コクサギ型よりも太い枝に発現する」ことを確認することができました。
 
 
 しかし、以前筆者は「サルスベリは太くなった枝では対生状態となり、枝がより太くなると輪生状の形態を見せ始めるようだ。」と記載しましたので、コクサギ型葉序と対生葉序を確認しただけでは、片手落ちと言うものです。
 
 
イメージ 1 写真①
 
 
 そこで、もう一度、高島平へ赴き、サルスベリの輪生状葉序の枝を測ってきました。
 
 
 実は前回、各葉序を10本前後測定しただけでは、葉序と枝の太さの相関を、客観的に証明(統計学的に有意差を出す)できないだろうと考えていました。
 
 
 しかし、予想以上に上手くいったので、今回はウハウハ気分で、二匹目のドジョウを狙いに行ったのです。
 
 サルスベリの輪生状葉序は、高い枝に多いので、今回は、事前にアルミ製の小さな梯子まで用意しました。
 
イメージ 2 写真②
 
 
 高島平の1丁目から観察を始め、次に高島平3~5丁目へ移動して、サルスベリの輪生状葉序を探し出し、夫々の枝の太さを測定しました。
 
 前回のブログにも記載しましたが、サルスベリの葉序は変化が多く、写真③のように、明確に輪生状と断定できないものが少なくありません。

 
イメージ 3 写真③
 
 
 そこで今回も、写真④のような典型的な輪生葉序のみを選んで14本測定しました。
 
イメージ 4
 
 その結果を表①にお示しします。
 
イメージ 5
 表①
 
 
 表①の数字は各葉序の枝の直径で、単位はミリです。

 表①は前回のブログでご紹介したデータに、今回測定した輪生葉序の値を付け加えたたものです。
 
 輪生葉序の枝の直径の平均は35.6㎜でした。
 
 その値をコクサギ型葉序の枝の直径と比較して、統計学的な有意差を認めました。

 つまり、「輪生葉序を見せる枝の直径は、コクサギ型葉序の枝の太さよりも間違いなく太い」と言うことができます。
 
 
 しかし、輪生葉序の枝の直径と対生葉序の枝の直径を比較すると、統計学的な有意差はありませんでした。

 表の右下の「対生vs輪生 0.132・・」という値が0.05より小さくないと統計学的に差があるとは言えないのです。
 
 つまり、「サルスベリは太くなった枝では対生状態となり、枝がより太くなると輪生状の形態を見せ始めるようだ。」とは言えないことになります。

 そこで、残念ですが、以前のブログに記載した上記の内容は次の様に訂正させて頂きます。

 「サルスベリは太くなった枝では対生状態や輪生状の葉序を見せ始める。」
 
 
 対生葉序と輪生葉序の枝の直径平均に差がありますので、もしかすると、測定数を増やすと統計学的に有意差が出て、「枝がより太くなると輪生状の形態を見せ始める」と言えるようになるかもしれせんが、筆者はその可能性は少ないと思うようになってきました。
 
 
 その理由は次のページで説明します。
 
筆者のホームページ 「PAPYRUS

 
 前々回のブログで、「サルスベリの葉序の変化は、枝の太さと相関しているように見える」と記載しました。

 かなりの数の枝を観察しての印象ですから、間違いはないと思うのですが、錯覚ということもあります。
 

 気にしだすと、お尻がムズムズしてきました。

 精神衛生上良くないのと、痔になったら面倒なので、早速ホームセンターでノギスと分度器を買ってきて、高島平のサルスベリを測りに行ってきました。
イメージ 1
 
 
 サルスベリは、立った姿勢で手が届く範疇の枝だけを観測しました。

 サルスベリの葉序は枝毎に変化が多く、写真①のようにコクサギ型葉序とも対生葉序とも判別の付けにくい枝が多々あります。
 
イメージ 2 写真①
 

 コクサギ型葉序は写真②に示すような典型的な枝のみを選択しました。
このような枝の直径と、葉相互の捩れの角度を11本測定しました。

 測定値は、その場でメモ用紙に記入し、サルスベリの葉序と一緒に撮影しました。
イメージ 3 写真②
 
 
 対生葉序も写真③のような、典型的なものだけを選択し、8本計測しました。
 
イメージ 4 写真③
 
 
 典型的な対生葉序の出現が少い為に、コクサギ型葉序と対生葉序の測定本数が異なる結果になりました。
 
 
 計測値はエクセルにまとめ、コクサギ型葉序と対生葉序の枝の直径に有意差があるかのT検定を行いました。
 その結果の表①です。

 
イメージ 5 表①
 
 
 サルスベリのコクサギ型葉序を示す枝の直径の平均は19.2㎜でした。
 
 対生葉序を示す枝の直径の平均は30.1㎜でした。

 統計処理を行った結果、対生葉序の枝の直径はコクサギ型葉序の枝の直径よりも間違いなく太いことが確認できました。
 
 サルスベリの対生葉序はコクサギ型葉序よりも太い枝で出現することになります。 
 
 
 サルスベリのコクサギ型葉序と対生葉序の、枝の上下の葉の相対角(隣り合う葉の角度)を測定した結果が表②です。
 
イメージ 6 表②
 
 
 サルスベリの枝の上下の葉の相対角は、
 
 コクサギ型葉序の平均は41.8°でした。

 対生葉序の平均は69.4°でした。
 

 統計処理を行った結果、対生葉序はコクサギ型葉序よりも、枝の上下の葉の相対角が間違いなく大きいことが確認できました。

 サルスベリの対生葉序は、コクサギ型葉序よりも上下の葉の相対角が大きい為に、より立体的に見えます。
 
 サルスベリのコクサギ型葉序は、サルスベリの対生葉序よりも、より平面的に見えると言えます。
 
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