好奇心の植物観察

定年退職後に木の観察を始め、草にも手を広げました。楽しい日々が過ぎてゆきます。 (旧ブログ名 樹と木のお話)

カテゴリ: サクラ


 9月にサクラ咲く 2018年09月12日
  台風がサクラの葉を落とし、葉の開花抑制作用が欠如した為。
 ソメイヨシノの実と子孫 2013年05月04日
  「染井吉野」の実と、「染井吉野」が受精して生れた新たなサクラ。
  多摩森林科学園で桜品種の知識を深める。
  桜の花は花弁の先が凹みます
 桜の魅力 2012年04月15日
  新宿御苑に咲いた11品種のサクラ
 桜咲く国 2014年03月24日
  イギリスからの帰途、サクラ咲く日本への感慨。

 小石川植物園 
  季節の風に倒れた一本の桜の記憶。
  小石川植物園で多くのサクラが咲き始めました。
  大雪で倒れた「安行寒緋桜」が今年も花を咲かせました。
 頑張れ! 安行寒緋桜 2016年03月02日
  2014年2月14日の大雪で倒れた「安行寒緋桜」が復活しました。
 カンザクラが満開でした 2012年03月20日
  小石川植物園のカンザクラの様子
  カンザクラ咲く、小石川植物園の早春
 
 神代植物公園
 冬の桜 2013年11月27日
  冬に咲く「子福桜」「冬桜」「十月桜」の紹介 

筆者のホームページ 「PAPYRUS
(財)日本さくらの会選定さくらの名所100選



 昨日の11日、小石川植物園を訪ねるとミズタマザクラ(水玉桜)C100910 が花を咲かせていました。
 
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 ミズタマザクラは神奈川県真鶴半島で発見された、マメザクラとソメイヨシノの自然交配種と推定される品種です。

 サクラにはジュウガツザクラのように秋に花を咲かせる品種がありますが、昨日花を咲かせたミズタマザクラは秋咲き品種ではありません。

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神代植物公園にて

 秋咲きではない証拠に、このミズタマザクラは今年も小石川植物園で、4月3日に満開の花を咲かせていました。

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 ではなぜ、春に咲くミズタマザクラが今頃花を咲かせたかですが、その秘密は樹形にありそうです。

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2018年9月1日           2018年9月11日

 実は、このミズタマザクラは2012年、以下の写真のように、今よりも高い枝に花を咲かせていました。

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 しかし、この頃既に木が弱り始めていて、2013年の冬には、根本にヒコバエを残したまま、枯れた幹が切断されて今のような姿になったのです。

 幸いなことに、根に損傷はなかったようで、翌2014年4月8日には以下の写真のように見事な花を咲かせていました。

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 ところで、ミズタマザクラの樹形の写真を左右に二枚並べましたが、この二枚の写真の違いがお分かりでしょうか。

 と言う筆者も、答えを知っているので気付きましたが、そうでなければ違いが分かる人はほとんどいないはずです。

 そしてその答えは、葉数の差です。

 実は、このミズタマザクラの葉を散らせたのは台風21号でした。

 台風21号は2018年9月4日、四国に上陸した後、関西を突っ切り、日本海を北へ去って行きました。

 関東は4日夜から5日の朝にかけて、小石川植物園では羊歯(シダ)池と呼ばれる池の畔のハンノキが倒れる程の強い風が吹き荒れました。

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 そして台風21号は、このミズタマザクラの葉も散り落して行ったのです。

 このミズタマザクラは上の写真のように枝数が少なく、普通の木に比べて全体に葉数が少ない為、普通では気づかぬ程に葉が散っても、全体への影響が大きくなります。

 今回のように、木に残された葉で作られるアブシジン酸量が全体にいきわたらない状況になり、しかもその後に暖かい日々が続くなどの条件が揃ったとき、今回のミズタマザクラのようにサクラが花を咲かせる現象が知られています。

 はい、今まで何度も申し上げておりますが、筆者は60の手習いで木の観察を始めた素人です。

 このような話は、本の知識の切り売りです。

 詳しい内容は、サイエンス・アイ新書 田中修著 「葉っぱのふしぎ」に記載されていますので、どうぞ近くの図書館かアマゾンで探してみて下さい。

 屋台で一杯ひっかけるよりも遥かに安い金額で、満足感が味わえること請け合いです。

 それにしても、時ならぬミズタマザクラの花ですが、東京は明日から気温が下がりますので、数日間は花が咲いているはずです。

 幾つかの条件が揃った時だけに見られる珍しい現象ですから、御用とお急ぎでない方はどうぞ、小石川植物園に足を運んでみて下さい。
 
 
 珍しいサクラの様子を見た帰り際に売店に寄って、サクラの話などで盛り上がりますと、売店のおじさんが、秋に咲いた桜も秋桜と言うのかな、などとお洒落なことを言っていました。

 そうそう、そう言えば、今日から『東京大学植物園 のど飴』の新製品(580円)が発売されたとのことで、早速一箱買って帰りました。

 東京大学のオリジナルグッズなので、受験生を持つ家族へのお土産にピッタリですし、東京の小石川植物園で遊んだ話のきっかけ等にすれば、ちょっとお洒落かもしれませ。

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 昨日の昼頃、朝食後に2歳の孫の子守りをしながら、金魚が泳ぐ睡蓮鉢を覗かせようと抱いた瞬間、尾骶骨の5、6個上で、ゴキッという音と共に、息が止まるほどの痛みが腰に広がりました。

 運動不足と老化による筋力低下が孫の重さを支えきれず、背骨に負担が掛かったのでしょう。

 朝から安静を勤めた為か、痛みが和らいだので、よせばいいのに、家族に内緒で、机に向かいキーボードを叩き始めました。

 痛みは精神にも打撃を与えるのか、昨夜は大学入試に落ちる夢にうなされました。

 受験に二度も失敗しましたから、この歳になっても後遺症が残っています。

 そしてまた同時に、その日その時は突然こんな風にやってくるだろうと思うのです。

 人生100年などと強がっていますが、そろそろ覚悟すべきは十分承知しています。

 振り返れば、かすり傷程度に終わった幸運な青春時代を経て、しゃにむに朱夏を乗り切り、ささやかな糧に恵まれた白秋を迎えました。

 「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。あるじと住みかと無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず」の如くです。

 淀む瀬もあり、瀬を早やめる滝川の季節もありました。

 最期をどう終えようかなど、不遜なことは考えませんが、その時が近づきつつあることだけは確かです。



 数日前の16日の木曜日、東京は、日本海の秋雨前線の影響で、北へと雲を運ぶ風が吹きすさびました。

 翌日の17日、時ならぬ風が植物園で木々の葉と枝を落としましたので、高い梢の枝葉が手元で観察できることを期待して、自転車で小石川植物園に向かいました。

 正門を入る前から、園内にチェーンソーの音が響いていました。

 そして音が聞こえる方へ歩を進め、最初に目にした光景がこれです。

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 前日の16日、日中に突然「ヤマザクラ 品種 群桜」 F140209 が倒壊したそうです。

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 作業の後に切り株を確認し、50環ほどの年輪を数えました。

 今から37年前の1981年、技官の川上幸男氏が著した「小石川植物園 郷学舎刊」には「ムレザクラ」の名と現在地を推定する記載がありますので、1981年頃には、この桜は花を咲かせていたはずです。

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 下の写真が、同じ場所で撮影した一昨日の「ムレザクラ」と、今春の3月23日に花の盛りを迎えた「ムレザクラ」です。

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 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」の一節が思いだされます。

 美しい桜でした。
 
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 当然のことに、人も花も盛者必衰のことわりから逃れることはできません。

 しかしその時々の、人のひたむきと花の華麗は、見る者に希望と勇気を与えてくれます。

 あの日の「ムレザクラ」は、品格のある清しさを漂わせていました。

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 白い花弁に包まれた花糸は花散る頃、薄紅色に染まり、若葉の中に佇みました。

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 あの日の「ムレザクラ」は移ろう時の中で夕陽に染められていました。

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 そして花散る「ムレザクラ」は散策路に白いレース模様を描き、花嫁を迎えるかのようなバージンロードの趣を見せてくれました。

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 花も人も、あるがままに生を全うし、次世代を迎える準備を整え、季節の変わり目に散ってゆきます。

 それが世の全てのことわりです。

 そして、あるがままの命の美しさは、今日に倒れた「ムレザクラ」のように、記憶の中に花を咲かせ続けます。

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 東京は3月早々に春一番が吹いて、先週は先週の14日に最高気温が22℃という5月並みの暖かさとなり、小石川植物園では、草木が一斉に花を咲かせ始めました。

 ちょっと前までダウンジャケットを着て自転車を漕いでいたのですが、それもすっかり「今は昔」。

 何しろ、一ヶ月前の2月18日には日最低気温が-2℃だったのですから、まるで夢でも見ているような気分です。

 そしてとうとう、春来たりなば心せわしき、誰もが待ち焦がれるサクラが咲き始めました。

 18日の日曜日に小石川植物園でソメイヨシノの開花を判定する基準木C130706の枝に、数輪の花が咲いているのを見つけました。

 そして、本館横のソメイヨシノにも数輪。

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 正門前の坂を登る途中で「ヤマザクラ 群桜」を見上げると、枝を微かに染めて、清楚な白い花が季節を告げていました。

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 森の奥へ歩を進めると、シダレザクラが淡いピンクの花で枝を染めています。

 この木はかなりの老木で、シダレザクラの名札を付けますが、枝は枝垂れていません。

 人は年取ると腰が曲がりますが、シダレザクラは年を重ねると腰が伸びるようです。

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 更にその先へ進むと、日本庭園に下る坂の入り口付近で、空へ伸びあがるサクラ(C040707)の枝に白い花を認めました。

 この木も相当の樹齢を感じさせますが、春になると、木に寄り添いたくなるような素朴な印象の花を咲かせてくれます。

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  小石川植物園の丘を下って梅園へ向かうと、ほとんどのウメが花を散らせましたが、「楊貴妃」や「桜梅」などの遅咲き品種が来園者の目を楽しませていました。

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  梅園から東へ向かう途中で、何時も気になる安行寒緋桜(F070303)が枝に葉を伸ばし始めています。

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 森の中でイヌシデやイヌブナの花を見上げ、

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  足元に咲くタチツボスミレの淡紫色の花弁に心和ませながら、丘の上に戻ると、

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 精子発見のイチョウの手前で、早咲きの早春桜と寒咲大島が満開の花を見せていました。

 安行寒緋桜同様、何本かの枝に緑の葉が萌え始めています。

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 柴田記念館近くのカンヒザクラが緋色に空を染めていますが、花の盛りは過ぎつつあるようです。

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 誰が言ったか、「花の命の短くて・・・」 

 一瞬の春とは分かっていても、散る花とは分かっていても、だからこその待ち焦がれた春。

 今年も約束通りに、「サイタ、サイタ、サクラガサイタ」春がやってきました。

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本館下に咲いていたヤマブキ

 
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安行寒緋桜」に伏された名札が、「大寒桜」に変更されています。


 2014年の大雪で倒れた、小石川植物園の大寒桜(安行寒緋桜
が、再び花を咲かせたことを去年のブログで紹介しました。

 この桜は2013年の3月まで、以下の写真のように見事な春の景色を見せていました。

 下の写真の手前側へ、根元から60度ほどの角度に傾いた樹形が独特の風情を醸し、枝の花が歩道を覆って、日本庭園へ向かう来園者の目を楽しませてくれたのです。

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 しかし、この傾いた樹形が災いし、東京都心で積雪27㎝という、1969年30㎝以来の45年ぶりの記録となった雪の重さに耐えかね、木が倒れた経緯は以前のブログの通りです。

 倒れた桜が切り刻まれた姿を目にして本当に胸が痛みました。

 チェーンソー跡が残る切り株で年輪を確認すると、35年程の若さだったことが分かりました。

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 その後、切り株に防腐剤が施され、残された幹の一角から伸びた枝に葉が茂り、花を咲かせた経緯も昨年のブログの通りです。

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 倒れた後、二年の歳月を経て再び花を咲かせた大寒桜(安行寒緋桜ですが、倒れる前の2012年に、この桜が満開となったのは、撮影記録から4月1~8日だったことが分かります。

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 2013年は3月12日に五分咲きとなり、3月20日に満開となっています。

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 しかし、2016年に復活した大寒桜(安行寒緋桜)が昨年最初に花を付けたのは2月28日(左下写真)で、3月18日(右下写真)には枝に葉が展開し、3月26日に最後の一輪を確認し、昨シーズンを終了しました。

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 2017年は、筆者が最初に開花を確認したのは2月12日(左下写真)でした。

 昨日、2月26日(右下写真)の日曜日、小石川植物園ではほんのり色づいた、可憐な姿の安行寒緋桜が道行く人に微笑みかけていました。

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 復活してから、大寒桜(安行寒緋桜の開花が早まったように思います。

 その変化が気候のせいか、あるいは桜の体内で何かが変わったのかは明らかではありませんが、これからも愛情を込めた目で、大寒桜(安行寒緋桜を見守り続けてゆきたいと思っています。


追伸:2023年3月末日、上記記事の「安行寒緋桜」に伏された名札が、
大寒桜」に変更されました。


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