前回のブログでヒガンバナ球根の内部構造を説明しました。
ヒガンバナの仮軸分枝システムを再度見直すと、ヒガンバナ一個の球根内に、花を咲かせる組織が茎軸「Ⅱ」先のS、茎軸「Ⅲ-1」先のfの二つあり、下図に記されていませんが、子球Ⅲ-2の生育が進めば、その先に花を持つ可能性があります。
筆者は今回の観察時に以下の仮軸分枝システムを全く認識していませんでしたが、今の目で再度、観察時に撮影した花茎の写真を見直し、花茎の位置を確認してみました。
構造を理解せずに撮影した写真での判断ですが、殆どの花茎は「Ⅱ」のSから出るようです。
そして花茎が2本立つ場合、左下写真では「Ⅱ」のSと「Ⅲ-1」のfと判断すべきですが、右下写真では明らかに分離し始めた球根から花茎が出ていますので、「Ⅱ」のSとⅢ-2の子球が花茎を出したことになります。(球根は同じ外皮で覆われています)
そしてまれに、以下の写真のような3本の花茎を伸ばした球根を目にしました。
この球根は全てが一枚の外皮で覆われています。
この球根は全てが一枚の外皮で覆われています。
これらの事実から、ヒガンバナの球根は、個々の器官の条件に基づき、夫々が独立して花茎を伸ばすように見えます。
3年分の仮軸分枝を抱合するヒガンバナの球根ですが、個々の球根内で毎年生じる器官をトータルマネジメントするシステムは備えていないと思えます。
今回612個体を計測した結果、径30㎜以上の球根が花茎をする率は58.4%、同35㎜以上が69.2%、同40㎜以上が75.9%でしたから、ヒガンバナが花を咲かせる為に、球根の肥大生長が必要条件であることは間違いなさそうです。
しかし、コロニーGは14個体の小さな集団ですが、花茎を有する8個体は、全ての球根径が40㎜以下でした。
そのような小さなコロニーほど花茎を有する株の比率が高いように見えます。
そのような小さなコロニーほど花茎を有する株の比率が高いように見えます。
このことから、球根が一定以上の大きさに育てば、花茎を出す条件として、肥大生長以外の環境要因などが影響力を増すかもしれません。
あるいは、球根が密集すると、栄養条件が整っても、花茎発生を抑制するファクターが発現してくる可能性もありそうです。
そのように考える理由として、
今回ヒガンバナ8コロニーで球根径を計測しましたが、その全てで球根径別分布をグラフ化し、その全てで以下のグラフのような R2値が高い近似直線を得ました。
そのような、各コロニーの規模と近似直線の傾き(y=ax+bのa)、即ちコロニー個体球根径分布の関係をみたのが以下のグラフです。
コロニーの規模が大きくなるほど、小さな球根の比率が増し、球根の成長が妨げられることが示されました。
ヒガンバナの開花や繁殖を考える場合、個々の球根だけでなく、コロニー全体を一つの生命体として認識する視点が必要と考えます。
ところで、ヒガンバナは球根のみで増えますが、毒を持つために動物は餌としません。
そのようなヒガンバナが勝手に増え広がる現象を各地で目にしてきました。
そのようなヒガンバナが勝手に増え広がる現象を各地で目にしてきました。
2年前に東北のヒガンバナを訪ねたとき、茨城県の西連寺でヒガンバナが増え広がる理由の一つとして「降雨で生じた地表を洗う水流」があると考えました。
今回の観察で、ヒガンバナが繁茂密集すると、直径1㎝にも満たない小さく軽い球根が恒常的に生み出されるシステムが明らかとなりました。
今回の観察で、ヒガンバナが繁茂密集すると、直径1㎝にも満たない小さく軽い球根が恒常的に生み出されるシステムが明らかとなりました。
左下写真は掘り起こしたコロニーAを下から見たものですが、球根の根が密に絡み合い、大きな球根程地中深く根を伸ばしています。
右下写真はそれを横から写した写真ですが、小さな球根の多くがコロニーの表層に浮き上がる印象を受けます。
右下写真はそれを横から写した写真ですが、小さな球根の多くがコロニーの表層に浮き上がる印象を受けます。
そのような球根は、地中深く根を張ることはなく、ちょっとした降雨で容易に流出するはずです。
2年前の直感的な感想が、今回の観察で裏付けを得た印象があります。
コロニーが密度を増すと、繁殖拡大のためには、新天地に移動する必要があります。
密度を増したコロニーで小さな個体が増加する現象は、種の生育地拡大に寄与している可能性があります。
今回の観察は、ヒガンバナ球根の形態や生態が開花時期に与える影響を検討する目的で行いました。
観察の結果
● 球根内部の分枝、子球毎の条件で花茎が出るらしい。
● 大きなコロニーでは、球根個々の温度環境が異なる可能性があり、
それが個体の開花日に差を生じさせる可能性がある。
● 大きなコロニーでは、球根個々の温度環境が異なる可能性があり、
それが個体の開花日に差を生じさせる可能性がある。
などの知識を得ましたが、開花に至る要因を明らかにすることはできませんでした。
今回の結果を受け、次回は地温変化と開花との関係を検討したいと考えています。
そのような検討時には、コロニーの影響を配慮すべきことを今回の観察で認識しました。
そしていつかは、ヒガンバナを観光資源とする地域の開花予想に貢献する結果が得られれば嬉しい限りです。
最後に、私の様な部外者にオープンな観察の機会を与えて頂いた小石川植物園とご厚誼を頂いた方々に感謝を申し上げます。
そしていつかは、ヒガンバナを観光資源とする地域の開花予想に貢献する結果が得られれば嬉しい限りです。
最後に、私の様な部外者にオープンな観察の機会を与えて頂いた小石川植物園とご厚誼を頂いた方々に感謝を申し上げます。
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