--- コクサギ型葉序の構造と機能を考える ---
 
 
 コクサギはミカン科コクサギ属の落葉低木で、葉を枝の左右へ交互に2枚ずつ付けるという変則的な形態を見せ、これをコクサギ型葉序と呼びます。
 
イメージ 1 写真① 以下P①と表示
 
 
 以前ご紹介したようにコクサギ型葉序はコクサギ以外でもケンポナシやサルスベリなどで見ることができます。
 
 
 しかし、何でわざわざこんな奇妙な葉の並べ方をするのでしょうか?

 植物は葉で光合成を行なって成長しますから、P①のように葉の間に空間ができるコクサギ型葉序は、葉の配置としては効率が悪いようにも思えます。

 しかし、幾つかの植物でもコクサギ型葉序が見られるので、それなりのメリットがあるのかもしれないと考え、コクサギを詳細に観察してみました。
 
 
 コクサギで、連続して同一方向へ葉を出している様子を観察しますと、一枚目と二枚目の葉が枝に付く角度(開度)は90°であることが分かりました。
 
 
イメージ 2 P②
 
 
 同様に、同一方向に連続する葉を観察すると、
 一枚目と二枚目の葉は枝先に向かって右側の列では右回り、左側の列では左回りに、夫々90°の角度を持つことが分かりました。
 
 
イメージ 3 P③
 
 
 これまでの観察で、コクサギ型葉序は互生葉序の変形のようにも見えます。

 しかし、互生葉序の場合、枝が横方向へ(地面と水平に)伸びると、葉が光を求めて葉柄を曲げるので、正確な観察が難しくなります。

 そこで、枝を直立させたコクサギを探しました。
 
イメージ 9 イメージ 4
 P④                          図①
 
  
 枝を直立したコクサギのP④の葉の配置を模式図、図①で示します。

 図①の明るい緑色の葉、4、8は、枝の裏側に位置します。

 8の番号を付けた葉はP④には写っていません。
 
 
 コクサギでは、葉1と葉2、葉3と葉4が枝を中心に点対称の位置関係のペアを作り、各ペアが相互に90°の開度を持ちます。 
 
 つまり、葉1と葉2のように、枝を中心に相対する(180°の開度を持つ)ペアの葉が、枝に付く位置が上下にずれて、夫々のペア毎に90°の角度(開度)を成して、枝先へと連なっている様子が確認できました。
 
 
 それを真上から観察したのが次の写真です。
 
イメージ 5 P⑤
 
 
 コクサギが枝を横へ伸ばした時に見られるコクサギ型葉序は、枝が直立する時には十字対生のように見えます。

 これを模式図で示すと以下のようになります。
 
イメージ 6 図②
 
  
 図②の葉の番号は、図①の葉の番号に対応します。
 
 枝を中心に相対する(180°の開度を持つ)葉のペア(葉1と葉2、葉3と葉4)が、十字対生に似た形で、枝先に向かって連なっています。
 
 
 通常の十字対生を示すアジサイの葉の写真を以下に示します。
 
イメージ 7 P⑥
 
 直立した枝を真上から見ると、光合成を行なう上で、通常のアジサイの十字対生とコクサギ型葉序に機能上の差が無いように思えます。
 
 
 では、何故わざわざこのような複雑な形をとるのでしょうか?

 その答えは図①から導き出されました。
 再度図①をご覧ください。

 
イメージ 8 図①
 
 
 図①において、葉1の真上に位置する葉5との間には、葉2、葉3、葉4の三枚の葉が存在します。
 同様に葉2の真上に位置する葉6との間には葉3、葉4、葉5の三枚の葉が存在しています。
 
 つまり、コクサギ型葉序に於いては全ての葉で、その真上に位置する葉との間に葉三枚分の相対距離が確保されることになります。
 
 
 もう一度、アジサイのP⑥をご覧下さい。通常の十字対生では、個々の真上に位置する葉との間に、葉一枚分の距離しか稼げていません。
 
 
 P⑥のアジサイでは、一番上の葉がその真下の葉に影を落としています。
 
 太陽は日の出から日没まで角度を変えて植物に光を与えますので、通常の十字対生であっても、下の葉の面の全てが一日中影になることはありませんが、コクサギ型葉序のように、真上に位置する葉との相対距離が大きくなれば、下の葉が太陽光を浴びる面積と時間が増え、光合成の効率を高められるはずです。
 
 
 正にこれが、コクサギ型葉序のメリットであると考えます。
 
 
 ※筆者は趣味で花の写真撮影を続けてきましたが、定年退職後に、植物の観察を始めたばかりの素人です。
 独学ですので、用語等の使い方などが正確ではないかもしれません。
  
 
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