静かな新春1月6日の昼近く、のんびりと床を抜け出しました。

 部屋で寛いでいると、昼を過ぎて窓の外に雪が降り始めました。

 今日は酒に疲れた胃と体を休めるつもりでしたが、雪が降り始めたのを見て、急いで身支度を整え、小石川植物園へと車を走らせました。

 受付で記帳し、本館へ続く坂を上ってゆきます。

小石川植物園E151002-22010602
 
 桜園の端に立つと、見慣れた景色の染井吉野がモノトーンに染まっていました。

 園内のあちらこちらに、雪景色を楽しむ人たちの足跡が残されていました。

小石川植物園D130406:22-001
 
 桜園の奥では、享保7(1722)年に、町医者の赤ひげ先生の意見によって設けられた旧養生所の井戸が300年目の冬景色の中に佇んでいました。

小石川植物園療養所の井戸002
 
 江戸から明治への激動の時代や、関東大震災などを見守り続けた楠の巨木の下で、春を待つヤブランに、白い雪がうっすらと降り注いでいました。

小石川植物園D090040601
 
 ツツジ並木の先に歩を進めると、鹿の子まだらに雪をかぶったツツジの狭間に靴跡が続き、早春桜や大島桜などが、白いモニュメントを見せていました。

小石川植物園C090907-22010601
 
 明治29(1896)年に平瀬作五郎によってイチョウ精子が発見され、世界の学会に大きな反響を起こしたイチョウの巨木が、鈍色の空の下で見事な輪郭を際立たせます。

イチョウ精子発見の-樹形214

 振り返ると、100m以上も続くイロハモミジの並木(通称カエデ並木)の錦秋を彩り、役目を終えて散り落ちた紅の枯葉が、雪を被ります。

 そしてモミジ並木が、密かに時を凍らせ始めました。

イロハモミジ-2022並木008
 
 雪が降りしきる中を、森の奥へと進んでゆきました。

 スズカケノキやボダイジュが枝を伸ばす道に、旅愁を漂わせる人影を認めました。

 未知なる銀世界の中で、孤立を怖れず、ひた向きに歩を進める人の姿がありました。 

小石川植物園C070302-22010602

 様々な木々の、様々な表情を楽しみながら、常緑樹の森や針葉樹の林を抜け日本庭園に立つと、池は墨汁を流し込んだかのように静まり、水面は鏡となって周囲の景色を映します。

小石川植物園E030610-22010601
 
 雪の寒さが、じわじわと靴の底から足に伝わり始めました。

 温かい色が見たくなって梅園に足を運ぶと、12月末から咲き始めた、ウメの品種「扇流し」が紅色の蕾と共に、健気な花を咲かせていました。

 私は今年も、冬から春にかけて、ウメとツバキを愛でる日々を過ごしたいと願っています。

ウメお扇流し-花168
 
 そして雪の日にどうしても見ておきたい景色がありました。

 何度見ても飽きない、メタセコイアの林の中から見上げる、空へ屹立する木々の姿です。
 
メタセコイア-樹形247

 この景色を見るたびに「明日に向かって、さあ始めるぞ」の思いが湧き上がります。


 皆さまもどうぞ、希望に満ちた初春の日々をお迎え下さい。

 
 寒中お見舞いを申しあげます。


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