好奇心の植物観察

定年退職後に木の観察を始め、草にも手を広げました。楽しい日々が過ぎてゆきます。 (旧ブログ名 樹と木のお話)

2021年01月


 ヒノキ 枝葉の成長相関
  ヒノキは枝の伸長に伴って葉が成長します。オーキシンが枝を伸長さ
  せますが、オーキシンが極性移動するのであれば、葉の成長に関わる
  オーキシンは、葉自体で合成されると考えるべきです。
  複数のヒノキ科植物で「枝が伸びれば葉も育つ」現象を確認。
  ヒノキは枝先で、片方が主軸、他方が側枝と見える二又分枝を行う。
  ヒノキ科植物の側枝パターンは、側枝発現の原則から外れる。
 関連した観察)
 裸子植物の分枝と枝葉の成長に関わるオーキシンの作用
  2016年12月06日
  裸子植物も、側枝の下部に付く葉の成長は抑制されている。

 裸子植物 葉序の進化を考える
  十字対生のアケボノスギ(メタセコイア)に螺旋葉序が発現。
  葉序進化の過程は、従来の教科書に記された「対生→輪生→螺旋」
  との一方通行の如き単純なものではないと考えます。
  メタセコイアの十字対生が旋回葉序(コクサギ型葉序)に変化。

 裸子植物 向背軸性不等葉の観察
  筑波実験植物園で6種のマツ科植物の不等葉性発現を目視で確認。
 裸子植物の不等葉性 2015年07月27日
  日光植物園で筑波植物園と異なる6種のマツ科植物の不等葉性確認。
 メタセコイアの不等葉 2015年05月02日
  メタセコイアの葉は、枝の左右交互に不等葉性を示す。
  京都府立植物園で、針葉樹8種の不等葉性、不等枝性発現を観察。
  オーストラリアで発見された、生きた化石のウォレマイ・パインに、
  中国で発見されたメタセコイア同様の不等葉性を確認しました。 
  イチイとイヌガヤが地面と水平方向に伸ばした枝の螺旋葉序が、背軸
  側に位置する葉ほど大きい不等葉性を示すことを観察。
 ラクウショウの不等枝 2015年05月31日
  ラクウショウの向軸側と背軸側から出る枝に不等枝性を確認。

 アカマツとクロマツ 不等葉性の検証
  クロマツが枝先で輪生状に分枝する様子から、クロマツの枝にオーキ
  シン偏在は生じないであろうことを推測。
 マツの不等葉性検証 追試 2015年11月26日
  風の影響が少ないと思う場所のクロマツで、大きく屈曲する枝の向背
  軸の葉に不等葉性発現を認めたが、サンプル数を増やす検証が必要。
  大洗海岸で。側枝の形状に着目してクロマツとグイマツの不等葉性を
  検証したが結果は得られず。
  アカマツとクロマツでは、枝の向背軸性の不等葉性は認められない。

 裸子植物 螺旋葉序のパターン
 マキ科の螺旋葉序の判定 2014年02月07日
  筑波実験植物園の温室に展示された、マキ科植物が3/8螺旋葉序で
  あることを確認。
 ラクウショウの葉序 2015年06月09日
  ラクウショウの葉序を観察し、螺旋葉序は変化すること、フィボナッ
  チ数で全てを説明しきれないないことに気付く。
  ラクウショウの8/21螺旋葉序を観察。
  イチョウのヒコバエで、イチョウ螺旋葉序の回転方向に左右差がない
  ことを確認。
  2016年07月17日
  メタセコイアの十字対生側枝で、最初に付く葉の位置は横腹側。

 裸子植物 様々な観察と話題
 
 2022年3月11日
  同時期に植栽されたメタセコイアの幹回りを計測。
  微小環境差がメタセコイア生育に及ぼす影響を確認した。

  マツ属は短枝の基部に鱗片葉が付き、頂部に針形葉が2-5個束生。
  マツ属は通常目にする針形葉と短枝の基部に付く鱗片葉がある。
  ゴヨウマツの短枝220セット中、5葉217セット、4葉1セット、
  6葉2セットでした。
  雪が落とした松の枝で、「松葉は、北半球では右巻きに捩れる」
  という俗説を検証。
 広い葉の針葉樹 ナギのお話 2012 年10月05日
  針葉樹とは何か?をお勉強しました。
 スギとヒノキを見分ける 2012年11月20日
  植物観察の初心者が、スギとヒノキの違いを理解したくて、植物図鑑
  の記述に苦労したお話。
  様々な図鑑で、ヒマラヤスギの毬果に関する解説を比較。
  ヒノキなどで、葉の表裏が逆であることを観察。
 葉を落とさない落羽松 2012年01月21日
  日本では珍しいメキシコラクウショウは「落羽松」の名が付きます
  が、冬に葉を落としません。
  小石川植物園でメキシコラクウショウの葉を1年に亘って観察。
 猿も困惑するチリーマツ 2012年10月16日
  チリ―マツ(モンキーパズル)の話題。
  セコイアメスギの樹皮の下を貫通してササが葉を茂らせていました。
  樹皮が厚いセコイアメスギの特徴が分かります。


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  先週確認した梅の様子が気になって、昨日再度、羽根木公園を訪ね、梅の花の咲き具合を確認してきました。

 結論から言えば、羽根木公園の梅の花は、一週間前と殆ど変わらぬ様子を見せていました。
 例えば先週、白花の「飛梅」は一輪だけ花を付けていましたが、昨日は同一と思える花を枝に認めました。
 左が先週撮影した写真で、右が昨日見てきた花です。
ウメと飛梅白-01 ウメと飛梅白-02
 花が枝に付く位置と花弁の形から、この花は一週間咲き続けてきた可能性が大です。

 冬に咲く花の寿命はどれ程なのでしょうか?
 また新たに好奇心をくすぐる疑問が芽生えました。
   
 梅の花を確認しながら公園を散策していると、不思議な現象を示す一本の木にに気付きました。

 以下の写真をご覧ください。

 クヌギと思う木の左側は枯葉が散り落ちて枝が裸ですが、右側は枯葉がそのまま枝に残っています。
クヌギー枝01 クヌギー枝03
 この木の右側半分のように、秋に葉を枯らした後、枝に葉が残る現象を枯凋(こちょう)性といい、カシワ(左下)やシナマンサク(右下)などは冬になっても枯葉が枝から離れることはありません。
 カシワ枯葉-011 シナマンサク葉041
 落葉樹は通常、気温が下がると葉の老化が進み、葉のタンパク質がアミノ酸に分解され本体に回収され、次の年に、新しい葉の合成に再利用されます。

 葉の付け根に、葉柄を横断する離層と呼ばれる構造が作られ、その部位で葉は枝を離れ、落葉が始まります。

 それらの落葉システムは、気温の低下によって、葉で植物ホルモンの一種であるオーキシン合成が止まり、離層組織でエチレン合成が始まることが直接の原因の一つと考えられています。

 その様子は、人や動物の雄雌が、男性ホルモンや女性ホルモンの作用で、男性らしい体や女性らしい容姿が作られるように、一つの個体は全て均一であることが一般的です。

 例えば、小石川植物園に、冬になっても春まで葉を落とさないイロハモミジがありますが、このイロハモミジも、全ての枝に葉が残りますので、枝毎に葉を落とし残すような、部位によって反応が異なるわけではありません。
イロハモミジ葉E120109-18
 そこでもう一度、羽根木公園で見たクヌギの様子をご覧ください。

 今度は同じ木を反対側から眺めますが、明らかに、同じ木の半分ほどの枝にだけ枯葉が散り残っています。
 クヌギー枝04 シナマンサク葉041
 私はこんな木の様子を初めて見ました。

 同一個体の中に、離層を作って葉を落とす枝と、離層を作らずに葉を残す枝が共存しています。

 これはかなり驚くべき現象だと思いました。

 もしかすると、木の半分がウイルスに汚染し、離層を構築するRNAが変化して、離層構築システムが変化した可能性なども考えました。

 こんな現象を目撃したら、ほっておくわけにはいきません。

 公園から1㎞ほど離れた場所の北沢公園管理事務所に出向き、樹種だけでも確認することにしました。

 事務室に入り、訪問の主旨を告げると、奥から出てこられた方に、公園で撮影したデジカメの画像を示し、

 「この木の枝の半分に葉が残る現象が不思議で、この木の名前を教えて頂きたくて伺ったのですが、木の名前がお判りでしょうか」と尋ねますと、

 「ああ、これはクヌギですね」の答えを頂きました。

 そして、続けて
 「実はこの木は、去年夏の猛暑で、木の半分が枯れましたが、処理が間に合わなくてそのままにしてあります」との説明でした。

 「え! そうなんですか、な~んだ、それなら当然ですね。納得できました。」
 「どうもありがとうございました」

 と頭を下げて、早々に事務所を後にしました。

 今日も本当に楽しい一日を過ごすことができました。

 それにしても、立ち木の枯葉を見て、離層組織を発想するのは、かなり浮世離れしているかもしれませんね。

 チャンチャン!



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  毎年この季節に、小石川植物園でウメ品種の開花観察を続けてきました。

 しかし今年は、小石川植物園が、コロナ禍の影響で新年早々の8日から休園となったことは前回のブログに記した通りです。

 東京は現在緊急事態宣言下ですが、出勤、通院、散歩など、生活や健康維持に必要な外出移動は除かれます。

 そこで、バスや電車を利用せずに、自転車で行ける羽根木公園であれば、誰にも迷惑は掛けないと判断し、今日は自転車をこいで、羽根木公園で梅を観察してきました。

 筆者は小石川植物園で、先週7日に例年よりも早い梅の開花を確認しています。

 更には、昨年12月にその兆候を観察していました。

 毎年小石川植物園で最も早く咲く、ウメの品種「扇流し」が、今シーズンは12月20日頃に花を咲かせたのです。

 近年で最も「扇流し」の開花が早かったのは、2015年12月27日、2016年12月28日ですから、今シーズンはそれらの年より1週間程開花が早かったことになります。

 今シーズンは、今までにない現象が観察できると期待していたので、このタイミングでの休園は本当に残念です。

 さて、今日訪ねた羽根木公園では、予想以上のウメ品種の開花を確認しました。

 とは言っても、羽根木公園梅林の状況は下の写真の通りですから、本格的な開花シーズンではないことを、最初にお断りします。
 羽根木公園12
 今日、羽根木公園で開花が確認できたウメ品種は以下の19品種です。

 品種名の後に、昨シーズンの小石川植物園の初観察日を付記します。

 植栽された場所(日陰か日向かなど)や個体差は考慮すべきですが、2021年はウメ品種の開花が例年になく早まっていることが分ります。
 ウあ淡路しだれ03 ウメえ鴛鴦08
淡路しだれ          鴛鴦
   ウメお大盃18 ウメお大湊04
大盃 (1月29日)     大湊 (1月24日)
   ウメか鹿児島紅05 ウメき錦光01
鹿児島紅 (2月25日)        錦光 
   ウメこ古今集01 ウメこ紅冬至03
  古今集 (2月5日)    紅冬至 (1月24日)
  ウメこ小梅01 ウメち中国野梅01
  小梅         中国野梅
   ウメと冬至06 ウメと飛梅03
冬至 (1月19日)       飛梅紅色
   ウメと飛梅白01 ウメひ一重寒紅02
飛梅白色        一重寒紅
   ウメひ緋の司05 ウメみ道知辺01
緋の司 (2月28日)      道知辺 (2月5日)
  ウメみ未開紅03 ウメや八重寒紅04 
  未開紅 (1月24日)    八重寒紅 (1月29日)
 ウメや八重野梅05


  小石川植物園は園の関係者に新型コロナ感染の疑いが生じたため、残念ながら1月8日から臨時休園となってしまいました。

 しかしそれでも、しかしそれだからこそ、冬の小石川植物園の魅力を書き留めておきたいと思うのです。

 前回のブログでは、小石川植物園で冬を彩るカンザクラや紅葉、木の実などをご紹介しました。

 今回は、小石川植物園で温室以外に咲く花をご紹介したいと思います。

 小石川植物園はかなりの広いので、慣れない方の為に、写真に花の位置記号を付します。

 入園時に得られる園内案内図を携え、スマホでこのページを参照すれば、容易に花を探し出せるはずです。
 どうぞ参考になさって下さい。

 位置記号の意味は、入園時に受付窓口にお問い合わせ頂ければ、丁寧に教えて頂けるはずです。

 入園したすぐの正面右手にヤブツバキが赤い花を咲かせています。

 そのすぐ後ろに白いヤブツバキの花も見ることができます。

 この場所以外にも、園内のあちらこちらで紅白のヤブツバキが咲き始めました。
   ツバキF130103-33 ツバキF150510b-13
位置F150508       位置F150510

 正門前に掲げられた園内案内図の横に、シナマンサクが枝を伸ばし、その枝に個性的な形の花が咲いています。

 シナマンサクは枯葉が枝を離れず、枝に残ったままに花を咲かせます。
 珍しい光景なので、葉にも着目してご覧になって下さい。
 マンサク-花034
位置F150508
 
 本館へ続く坂を少し上った右手の斜面にロウバイとソシンロウバイが香を放ちはじめました。

 ロウバイとソシンロウバイは以下の写真の通り、花の中心部の色が異なります。
 ソシンロウバイは中心部が透き通った黄色です。
   ロウバイ-花060 ソシンロウバイ-花050
位置E150806       位置E150808

 そのまま坂を登ってゆくと、本館の真下で坂が左へ曲がる辺りに、ナンテンが赤い実を付けています。
 ナンテンは小鳥に目立つように赤い実を付けますが、一度に食べ尽くされないように、実には有毒成分であるアルカロイドが微量に含まれます。
 人が大量に食すと知覚や運動神経麻痺などを起こす危険があるそうです。
 ナンテン-実023
位置D140808

 本館裏手の小さな花壇の中にタイワンホトトギスの花を見つけました。

 本来は10月頃に咲く花ですが、今シーズンは何時もの年と気候が異なる為なのでしょうか。
 そして、タイワンホトトギスのすぐ横にエリカ・カリキュラータの花を見かけました。
 和名を「蛇の目エリカ」と言い、花の中の黒い雄蕊が和名の由来だそうです。
 タイワンホトトギス-花14 EricaCanaliculata-05
位置 D130607       位置 D130607

 本館横から桜園の中を突っ切って西へ歩を進めますと、ツツジ園の脇で、黄色い花を咲かせたチョウセンレンギョウに出会えます。
 このチョウセンレンギョウの一株は、毎年11月上旬ごろから花を咲かせますので、そのうちきっと開花システムの解明に役立つ日がくるだろうと思いながら観察を続けています。
 チョウセンレンギョウ花132
位置 D100807 

 ツツジ園では、狂い咲きしたモチツツジ‘胡蝶揃’やエゾヤマツツジなどに気付かれると思います。
モチツツジ胡蝶揃-花065 エゾヤマツツジ-花083
位置D100404       位置D100204
 そしてモチツツジ‘胡蝶揃’やリュウキュウツツジ‘関寺’ の紅葉にも目を向けて頂ければ、冬の植物園での散策が、より一層印象深いものになることでしょう。
  モチツツジ胡蝶揃-葉029 リュウキュウツツジ関寺-葉011
位置D090404      位置C101007

 お勧めのコースとして、この後ツバキ園に足を向ければグランサムツバキやカンツバキ‘歌枕’などがご覧頂けます。
 グランサムツバキ花187 カンツバキう歌枕-花036
位置C100208        位置B00902

 ツバキ園を出て、冬木立の森を抜け、梅園に足を運べば、「探梅」という俳句の季語そのままの、寒気に包まれた林で、一輪の梅を探し求める時間を楽しむことができるはずです。

 私は1月7日に梅園を歩き廻り、今年はウメの開花が早まる様子を確認しています。

 一日でも早い小石川植物園の再開を心より願っています。


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 多くの方は冬の植物園を

 「冬に行っても見るものがない」
 「冬枯れした、寒々しい木や草を見ても面白くない」

 などと思っているかもしれません。
 
 しかし、以前の記事で紹介したように、大気圏の彼方まで澄み渡った青空に聳える大樹の造形美は本当に見事です。

 そして冬の植物園では、予想する以上の彩を楽しむことができます。

 例えば、小石川植物園で、NHKドラマ「赤ひげ先生」の舞台となった旧養生所の井戸の横に咲くカンザクラは多くの人の目を惹きますが、その枝に散り残る茜色の葉の美しさは格別です。
 カンザクラ-花2021_004 カンザクラ-葉003
 分類標本園で、オオツルボが伸ばす葉の若草色は、ウラハグサの枯色と好対照をなしていました。
 オオツルボ-021 ウラハグサ71
 ススキの葉は、驚くほどに多様な彩をみせて、紫に桃色珊瑚の光を当てたかのような葉の色が不思議です。
ススキ-葉022 ススキ-葉020
 ロウヤガキの実の紅色とノシランの実の漆黒は、小鳥達の目にどのように映るのでしょうか。
 ロウヤガキ-実065 ノシラン-実013
 花を咲き終えたシオンやタムラソウが、枝先に残したオブジェに淡いブラウンを見せています。
 こんな色のジャケットを着こなしてみたいものです。
 シオン-萼001 タムラソウ-実04
 サツキは緑から朱へ、オオヤマツツジは緑から辛子色へ、グラデーションの葉を掲げていました。
 サツキ葉051 シロバナオオヤマツツジ-葉012
 クチナシは実をオレンジ色から赤色に染めて、ホンコンドウダンは新芽の鴇色に紅を差します。
 フイリクチナシ-実004 ホンコンドウダン-蕾19
 セイヨウタンポポのタンポポ色とナンテンの赤に目が眩みました。
 セイヨウタンポポ-花026 ナンテン-実024
 そしてメガルカヤやナガバノコウヤボウキの彩に安堵を感じるのは、古稀を迎える男の自然な生理なのかもしれません。
 メガルカヤ81 ナガバノコウヤボウキ-実009


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