好奇心の植物観察

定年退職後に木の観察を始め、草にも手を広げました。楽しい日々が過ぎてゆきます。 (旧ブログ名 樹と木のお話)

2018年03月


 驚くばかりの春の速さです。

 しかしそう感じること自体、時への感性がにぶり、惰性に過ごす淀みに嵌ったかも、の思いが脳裏をかすめました。

 とは言っても、己の足らざるを知る証でもあるので、いたずらに怖れることはないのかもしれません

 世阿弥が語った「時分の花」の花の盛りであるのならば、あるがままに楽しみながら歩を進める、ただそれだけのことです。

 そして願わくば、移ろう季節の花と萌える緑の感動を、誰かに伝えることができれば、花散る里の先へ、更に歩を進める勇気が湧いてきます。

 平成30年3月、小さな島国の大都会に咲く花を以下にご紹介します。

 リストするのは、3月4日3月13日3月15日3月18日3月19日3月21日3月26日の中でご紹介できなかった花です。

 撮影は全て小石川植物園です。

 草花はページを改めます。


ミズキ科 
  アオキ            ヒメアオキ富山産
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バラ科
 
  オオヤマザクラ       ヤエノオオシマザクラ  
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ヤマザクラ             ヤマナシ
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ヤマブキ
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オオリキュウバイ
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カエデ科
    オニモミジ        ヤクシマオナガカエデ   
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カバノキ科 
アサダ
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(枝に咲く花)               (落ちていた花)

ツツジ科 
 キヨスミミツバツツジ    リュウキュウツツジ藤万葉  
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ドウダンツツジ
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ブナ科 
クヌギ
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クスノキ科 
    クロモジ          テンダイウヤク   
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マンサク科 
キリシマミズキ
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ミカン科
 コクサギ雌花
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クルミ科
 
ヒメグルミ花
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モクレン科
 
モクレン
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モチノキ科 
モチノキ
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ヤナギ科
 
シダレヤナギ
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(枝に咲く花)        (落ちていた花

イヌコリヤナギ雌花       イヌコリヤナギ雄花
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マメ科 
ハナズオウ
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ウマノスズグサ科
キダチウマノスズクサ
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ヒノキ科 
ヒノキ
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イヌガヤ科 
Cephalotaxus sinensis
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 昨晩のテレビで、気象予報士の森田さんが、イチョウの「芽出し」が四国の松山で観測されたことを話題にしていました。

 気象庁はそんなことまで記録しているのか!と驚くと同時に、東京のイチョウの「芽出し」は一週間前だったのをご存知かな? と思いました。

 実は昨年の11月、イチョウ短枝の普通でない葉の構成を見て、年を越したらイチョウの若木の様子を確認すると、ブログに書き込みました。

 なので、有言実行通りにイチョウの芽を観察してきましたが、

 対象の木は、小石川植物園の正門を入ってすぐの、F150501の場所に育つ雄イチョウです。

 論より証拠ですから、先月2月21日から昨日までのイチョウの芽の変化を以下に御覧下さい。

2月21日 
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3月13日
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3月23日
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3月27日
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3月28日
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3月29日
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 如何でしょうか、「イチョウの芽出し」はどの状態を示すか分かりませんが、3月23日の状態は既に「芽出し」と考えて良いかもしれません。

 3月13日の状態ではないだろうと思いますが・・・

 判断に間違いがなければ、東京のイチョウの「芽出し」は四国松山よりも約一週間早かったことになります。

 折角なので、過去の同じ木の「芽出し」状況を、以下にご覧頂こうと思います。

 今年は春が、奔流の如く押し寄せた感があります。

2015年3月26日
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2016年3月26日
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2017年3月25日
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 2月下旬からスタートさせたセンチュリープロジェクト、手始めとしてヤブツバキ幹回りの計測を行いました。

 小石川植物園内に生育する、幹回り10㎝以上のヤブツバキ424株の測定を終えたのは3月13日でした

 その結果の分析は暇を見て行いますが、今回は古木ツバキ発見の話題です。

 環境省の「巨樹・巨木林計測マニュアル」に則し、地上130㎝の位置でツバキの幹回りを計測した結果、幹回りが1mを超えるヤブツバキが小石川植物園に4株あることが分かりました。

 以下の写真のような長さ130㎝の棒の先にメジャーを固定し、得られた測定値をコンパクトデジカメで撮影記録しました。

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  しかしヤブツバキの多くは、以下の写真のように、根本から株立ち状に分枝していました。

 そのような場合は、個々の分枝の周長を、幹の中心部ないし分枝の付け根から130㎝の位置で計測し、最下部の根廻も併せ計測しました。

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 大きなヤブツバキは単幹の場合も根廻を計測しましたが、その結果、根廻100㎝を超える個体は11株を数えました。

 全ヤブツバキの測定値を集計し、小石川植物園の最古木はE090101の位置に植栽されたツバキであることが分かりました。

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  このE090101の株は根廻133㎝で、地上122㎝で二又に分かれ、夫々の枝の太さは80㎝と78㎝でした。

 地上80㎝の最峡部での幹回り114㎝という値が得られました。

 但し、このツバキの根本には、以下の写真のような巨大な洞が見られ、この位置で分枝していたことが明らかです。
 
 その上部に現存する幹は、一定の年月に亘り、供給されるべき栄養素が分散されていたことになります。

 そのような状況から、地上80㎝での幹回り114㎝という値は割り増して判断すべきです。

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 上に得られた数値から、この木の樹齢を推定しました。

 富山県氷見市長坂に存在していた「長坂の大椿」が、ツバキの幹回りと樹齢に関する客観的なデータを提供しています。

 この「長坂の大椿」は数年前、すぐ横に舗装道路が作られて後に衰弱し、2014年に枯死しています

 この大椿は幹回り200㎝でしたが、枯死後に確認された年輪から、樹齢は370年

であったことが判明しています。

 この事実から得られる値(370/200=1.85)は 「長坂の大椿」が幹回りを1㎝大きくするために1.85年の歳月を要したことを明らかにします。

 この値を小石川植物園のE090101株に当てはめますと、

 最峡部の幹回りで推定すれば 114×1.85=211年

 根廻の値を用いて推定すれば 133×1.85=246年

 となり、少なく見積もっても200年超の古木であることは確実です。

 小石川植物園では、1727年に中国から輸入されたサネブトナツメの樹齢が290年、精子発見のイチョウの樹齢は250年以上とされますので、今回計測したツバキはそれらの木々に匹敵する樹齢を誇ることになります。

 ここまで記した事実は、従来からの小石川植物園を紹介する資料中にはなく、2~3年前に実施された小石川植物園の歴史を紹介する後援会会員向け公開講座の中でも触れられることはありませんでした。

 そこで、今回発見された古木ツバキが置かれた状況を再確認してみますと、

 以下の写真はE090101株の横から北の方向を眺めたものですが、右手奥に、山本周五郎の時代小説「赤ひげ診療譚」のモデルとなった、小石川療養所の井戸が見えています。

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 また、踏み分け道の横には、石灯篭の部品のような石の加工物が打ち捨てられていました。

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 8代将軍吉宗の享保6年(1721)に御薬園が拡張され、現在の植物園の形が作られましたが、上に示す写真で、北方向に伸びる道の辺りを境として、御薬園は東西二つに分けて管理されていました。

 享保7年12月(新暦1723年1月)には施薬院(養生所)が設けられ、享保20(1735)年には青木昆陽によるサツマイモ(甘藷)の試作が行われています。

 今回の古木ツバキが育つ辺りは、東西の御薬園から河岸段丘を下り、礫川(こいしかわ)の流れに沿って後楽園方向へと向かう通りへ続く坂の出入り口にあたります。

 施薬院(養生所)が機能していた140年間、赤ひげ先生や病人を見舞う人々など、この道を往来する人の姿は絶えなかった筈です。

 古木ツバキはそのような場所に、一種のシンボルツリーとして植栽され、春ともなれば可憐な花で病む人々に希望の灯を与え続けていたことでしょう。
  
 古木ツバキと対峙するかのように、道を挟んだ反対側には、地上130㎝での幹回り232㎝を誇るウバメガシが聳えます。

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 ウバメガシは木が緻密で太りにくく、備長炭の原料として用いられますが、この木も樹齢は200年を優に超えているはずです。
 
 つまり小石川植物園は現在に至るまで、薬草栽培やサツマイモの試作などに利用され、関東大震災時には被災者の避難所として使われましたが、この付近の樹木は人の手が加えられないままにある可能性が高そうです。

 以上のことから、今回発見された古木ツバキは、従来から認識されていた記念樹同様、文化財保護法によって名勝及び史跡に指定された小石川植物園の歴史を物語る、庶民の暮らしを見続けた生き証人としての価値を持つ木に違いありません。

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全国の花の名所 椿の名所」    
花の旅  氷見に椿古木を訪ねる」 
 


 気が付けば春真っ盛り、先週の日曜日に「あれよあれよ」と驚いていたのを忘れそうです。

 小石川植物園で先週ちらほらと咲き始めた三春シダレザクラやシダレザクラが今日は花が風に舞っていました。
  
 たった一週間しか経っていないのに、時の速さに驚くばかりです。

 そうですよね~ この前学校を卒業し、会社に就職したばかりと思っていたら、今はもう年金生活ですから、冬から春への時の流れなど、まばたきしている間みたいなものです。

 しかし、その一週間に小石川植物園で、新たに、こんなにも沢山の花が咲きそろいました。

 年に一度の花の季節の始まりです、さあどうぞ、ゆっくりとお急ぎ下さい。


バラ科
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    ユスラウメ        スモモ‘メスリー’

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シジミバナ           ユキヤナギ
 
モクレン科
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ベニコブシ             シデコブシ

ツツジ科
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  ミカワツツジ         シャクナゲ園芸品種

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   ミツバツツジ         タカクマミツバツツジ

カバノキ科
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   イヌシデ雄花          ウダイカンバ雄花   

アケビ科
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シロバナアケビ

アブラナ科
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イヌナズナ

アヤメ科
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シャガ

カエデ科

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イタヤカエデ           イロハモミジ雄花

キブシ科
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         キブシ雌花      キブシ雄花(葯に黄色い花粉)      

キンポウゲ科
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  セリバオウレン       ヒイラギナンテンモドキ

グミ科
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トウグミ

サトイモ科
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ウラシマソウ

スイカズラ科

ツバキ科
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     ヒサカキ雌花     ヒサカキ雄花(黄色い葯が見える) 

トウダイグサ科
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オオバベニガシワ雄花        ヤマアイ雌花  

ナデシコ科
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ハコベ

ハイノキ科
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クロキ雄花

ブナ科
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イヌブナ雌花            イヌブナ雄花

ミカン科
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  ウチダシミヤマシキミ雌花    コクサギ雄花        

メギ科
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      ホザキイカリソウ     イカリソウ        

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ヒイラギナンテン

ユキノシタ科
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タンチョウソウ


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 春になると必ず目にするのがサクラの開花予想とそれを地図に描いた開花前線です。

 しかしサクラには700種以上の品種があるとされ、早咲きは12月下旬ごろ(カンザクラ)、遅咲きは4月下旬ごろ(カンザン)ですから、サクラの開花予想とはソメイヨシノの開花日を予想していることになります。

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満開のソメイヨシノ

  そのソメイヨシノの開花日予想で実際に行われるのが、冬に寒さが峠を越した日から、日毎の平均気温を積算し、その合計が400℃を超えた日を開花日として推定する方法です。

 ソメイヨシノは全が同じ遺伝子を持つクローンですから、全国に育つソメイヨシノは気温の変化に対して同じ反応をします。

 そしてソメイヨシノは気温の変化に応じて予想通りに、日本列島を南から北へ、前線を描くように咲き上がります。

 同じ方法は、スギ花粉の飛散開始日予測にも応用されています。

 スギの植林は殆どの場合、挿し木によって苗作りが行われますので、ソメイヨシノと同様、スギ林の多くが、同一遺伝子を持つクローンで構成されています。

 スギが冬の寒さの峠を越して「休眠打破」が行われた日から、日々の平均気温を積算し、一定の数値になると、スギの雄花が開き、花粉が飛び始めます。

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11月のスギの雄花

 上記の話の中のキーポイントの一つが遺伝子が同一であるクローン、そして「外部変化(気温)に対する反応(開花)」が二つ目のキーポイントです。

 ところで数年前、日本の研究者が、葉が日長の変化を受けて作るFTタンパク質が枝先に運ばれ、花芽を作ることを明らかにしました。

 植物が花芽を作ることと、作られた花芽が開花することは同じではありませんが、花が作られ開花する一連の工程は、植物内部のタンパク質やホルモン等で調整されています。


 植物園でヤブツバキの開花日を観察していると、花を咲かせる時期に大きな差が見られますが、ヤブツバキにはサザンカなどの血が混じる個体の存在が知られています。

 そしてもう一つ、筆者が以前から興味深く観察してきたのがアテツマンサクの開花日です。

 小石川植物園のC08地区には2株のアテツマンサクが並びますが、アテツマンサクを解説する白い看板の左側の木が、右側の木よりも、必ず3週間程度開花が遅れます。

 アテツマンサクは、中国、四国、九州に分布し、基準種であるマンサクは関東以西から九州に広く分布し、
アテツマンサクと重複するそうです。

 マンサクとアテツマンサクの違いは、マンサクは若葉の星状毛が早く脱落し、アテツマンサクは褐色の毛が残ることだそうですが、筆者はまだ自分で確認したことはありません。

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 今回、上記2本のアテツマンサクの開花日、そしてマンサクの開花日(同じ気象条件と考え得る分類標本園に植栽)を以下の表に整理しました。

 すると、アテツマンサク左マンサクの開花日が近似し、両者の平均開花日が一致することが分かりました。

 
 2013
 2014
 2015
 2016
 2017
 2018
 平均
アテツ右
 2/3
 2/11
 1/28
 2/4
 2/12
 2/7
 2/4
アテツ左
 2/24
  ND
 3/4
 3/8
 2/25
 2/20
 3/1
マンサク
 2/24
  ND
 2/25
 2/28
 2/25
 3/16
 3/1
アテツ
左右差
 21日
 
 35
 32
 13
 13
 23

 最初に記した、ソメイヨシノとスギの開花日予測から考え、小石川植物園のアテツマンサク左とマンサクの開花日が近似し、平均開花日が合致することは、非常に興味深く思えます。

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