前回、全身に光を浴びるヤマグワが、異形葉性発現の機序を語る様子を見て、独立木を観察し、更に新しい成果を得たいと、八王子の小宮公園へ車をはしらせました。
しかし、小宮公園の目的の木の前に立つと、根元には切り刻まれた枝が積み上げられていました。
数日前までは下の写真のような姿だったのですが、
南側の枝が折れて、樹形が変わっていました。
今回は、南北の枝で異形葉の比較をするつもりだったのですが、すっかり出端をくじかれてしまいました。
しかし、渋滞の甲州街道を1時間半もかけてやってきたのですから、ここでおめおめと引き下がる訳にはいきません。
折り重ねられた枝の山から、幾本かを引き抜き、葉の観察を始めました。
枝に付く全ての葉が、切れ込みのない無分裂葉です。
小さいものは5㎝程度、大きいものは15㎝程度の葉が隣り合っています。
そんなことをしていると、枝の山の中に、真新しい新緑色の枝を見つけました。
そして、案の定、その枝の葉の全てが、切れ込みのある分裂葉です。
先ほどの枝と並べますと、一枚一枚の葉が大きく、薄くペラペラです。
枝を比べると、新緑色の枝は、瑞々しく柔軟で、少なくとも今春以降に伸び出たことに疑いはありません。
一方、葉に切れ込みのない無分裂葉が付く枝は、硬く木質化しており、一定の年月を経ていることが明らかです。
新緑色の枝から葉を外し、地面に並べてみました。
15枚全てが切れ込みのある分裂葉でした。
新緑色より少し褐色がかった、その下部の枝に付く葉は、10枚が分裂葉で1枚が無分裂葉でした。
積み上げられた枝の山の中に、別の新緑色の枝を見つけました。
この枝の葉も同様に枝から外し、葉形を確認しましたが、20枚全ての葉が、切れ込みのある分裂葉でした。
更に観察を続けると、新緑色より少し緑が濃い枝の枝先に分裂葉(赤矢印)を見ますが、太い幹から伸びた、硬い枝に付く葉は全て小さな無分裂葉でした。
今回の観察は、枝の伸長力に充ちた、オーキシン活性が強いと思える、新緑色の若い枝での観察は、わずかに2本だけでした。