好奇心の植物観察

定年退職後に木の観察を始め、草にも手を広げました。楽しい日々が過ぎてゆきます。 (旧ブログ名 樹と木のお話)

2016年11月


 11月も今日と明日を残すのみとなりました。

 12月に入れば、いよいよ冬本番です。

 冬は冬で美しいものが沢山あるのですが、その話はまたの機会として、過ぎゆく秋を振り返り、2016年秋の印象を整理しておくことにしました。

 一週間ほど前から、小石川植物園で出会ったをブログに認めてきましたが、錦秋ともなれば赤を外すことはできません。

 というわけで、最後の色は赤です。

 秋の赤といえば、まず思い浮かぶのはイロハモミジ。

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 そんなイロハモミジも年によって、木によって、あるいはその日の気温によって微妙に色を変えます。

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 イロハモミジの紅葉と並び評されるのがドウダンツツジです。

 以前から、兵庫県豊岡市安国寺のドウダンツツジの紅葉が見事だと聞いているので、足腰が弱る前に一度は是非・・・

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 ツツジではミツバツツジも紅葉します。

 ハグマノキなども葉を紅く染めます。

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     左:ナンゴクミツバツツジ        右:ハグマノキ

 紅葉に限らず、秋の庭ではサザンカやツバキなどの花木が紅を見せてくれます。
   
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    左:サザンカ「三国紅」     右:ヤブツバキ        

 そして晩秋の頃から北国ではナナカマド、関東辺りではナンテンの実が朱や赤に色付き始めます。

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       左:ナナカマド       右:ナンテン         
   
 和風の庭ではセンリョウ、洋風の庭ではピラカンサなどが紅色に染まって小鳥達へのアピールを始めました。

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左:センリョウ     右:ピラカンサ
   
 野山に足を運べば、ヒョウタンボクやカラスウリの素朴な赤に出会えます。

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左:ヒョウタンボク        右:カラスウリ  
   
 そしてこの秋、一番印象深かったのがヒメザクロの実です。

 「柘榴石(ガーネット)色の赤そのもの」との表現はおかしいでしょうか? 

 ザクロが先で、その色に似た色が柘榴石色ですよね。

 でも、木に生ったままで、実を割って覗くツブツブが見せた赤が、私のこの秋一番の赤でした。

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 そして梢の先ではイイギリクロガネモチの実が赤く色づき始めていました。

 イイギリクロガネモチも、これから冬を迎える季節の中で存在感を増してゆくことになります。

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 晩秋の植物園で色遊びをしていると、いつの間にか陽が西へと傾きかけていました。

 ワインレッドに染まった染井吉野の枯葉が闇の中へ沈み込もうとしています。

 今日覚えた赤い情熱も怒りも、全てが一旦闇に集約され、明日はまた明日、東の空に必ず灼熱の太陽が昇ってきます。

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 束の間の秋が過ぎ去ろうとしています。

 振り返えれば不思議な秋だった気がします。

 9月に曼珠沙華が咲き始める頃は、東京都心での日照時間が記録的に少なく、10月に入ると30℃を超える日々が続きました。

 そして、11月24日には明治8年に統計を取り始めて以来初という都心の積雪を観測しています。


 太平洋の向こうで花札遊びのような名前の人が次期大統領に決まり、カリブの島国の英雄が他界したりと、何かと話題の多い秋でした。

 今年の秋こそ、虫の音と共に灯火親しむ秋を過ごそうと思っていましたが、気が付けば、身近にひざ掛けや手袋などが置かれ、冬本番はもう目の前です。

 そんな2016年の11月、雨の予報の最後の日曜日、私は朝から机に座り、小石川植物園で撮りためた画像から、黄色にスポットをあてて、11月に目にした秋を振り返ってみました。

 左は11月18日に撮影した精子発見のイチョウの樹、そして右が一週間後の11月26日の同じイチョウの樹です。

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 秋の陽がつるべ落としに落ちるのと同じ、黄葉した葉は急激に色彩を失い大地へと戻ります。

 毎年のことですが、「行く河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず」との台詞が脳裏に浮かびます。
   
 シラカバやシナマンサクも夫々の装いで秋を迎えていました。

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 ユリノキが青空を背に見事な黄葉を見せていました。

 ユリノキの葉は半纏の形をしているのでハンテンボクの別名を持ちます。

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 同じように、シナユリノキが高い梢の先で明るいレモンイエローに葉を染めていました。

 シナユリノキも半纏形の葉をしていますが、シナユリノキはシナハンテンボクとは呼ばれないようです。

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 黄赤色のオニモミジに緑黄色のヒメザクロ。

 どちらの樹にも、今年はずいぶんお世話になりました。

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 秋色の黄といえば、必ず思い出されるのがカリンの実です。

 季節になると、小石川植物園正門横の受付窓口で無料配布されますので、毎年もらってきますが、一個置いて置くだけで部屋は秋の香りに満たされます。

 そして夏みかんが柴田記念館の近くでふっくらとした姿を見せていました。
 
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 秋にはツワブキやシマカンギクなど、黄色い花が目立ちます。

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 イソギクは、鼻の奥の奥へと広がるような、独特の香りとともに、野趣に富んだ花が、この季節に無くてはならないものの一つとなっています。

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 キミガヨランの花は白とばかり思っていたのですが、夕日の中、シャンデリアのような様子で淡黄色の花を飾っていました。

 リュウゼツラン科のキンポウラン。

 葉の縁の緑黄色から白色へと変化する、気品ある色彩に目が引き寄せられます。

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 そして、夕日を浴びながら池の水面に映しだされたイチョウの黄色は、平穏な小春日和が多かった、つつがなく終わりゆく2016年秋のイメージに重なります。


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 公孫樹を黄色く染めたお日様は、明日も必ず東の空に、明るい輝きと共に姿を現すとおっしゃっていました。

 今日も一日、本当にありがとうございました。


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 針葉樹の森を抜け、河岸段丘を日本庭園へと下ってゆきます。

 目の前に旧東京医学校本館の赤い屋根が見えてきました。

 雪で白く薄化粧された緑のヒラドツツジや赤く紅葉したドウダンツツジの間に濡れそぼった道が続きます。

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 日本庭園の芝生では、クマザサのストライプに白雪のトッピングが施されていました。

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 寒さのせいか、日本庭園の池の鯉も今日は動きが緩慢です。

 池の水面に細かな模様が見えています。

 霙の中に雨の比率が増えてきたようです。

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 赤く染まったナンキンハゼの下で、ミズカンナの葉が砂糖菓子のような雪を被っています。

 ミズカンナは冬になると葉が朽ち果てますので、雪を被ったミズカンナもめったに見ることができない光景です。

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 2014年の大雪で倒れた安行寒緋桜の切り株が、2年ぶりに花を咲かせた枝と一緒に冬を迎えようとしていました。

 枝先には、健気な芽が見えますので、来年もきっと期待に応えて可憐な花を咲かせてくれることでしょう。

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 ハギ園横の浮島の池の畔に立つと、黄葉した青壇が池の上に枝を伸ばしていました。

 この樹のネームプレートには「Pteroceltis tatarinowii」と表示されています。

 この樹は中国原産で、この樹の繊維は書道に使う宣紙に用いられます。

 そう思って見れば、この場所の情景が水墨画のように見えてきました。

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 ラクウショウ(落羽松)が葉を赤褐色に染めています。

 ラクウショウは北米原産の針葉樹で、冬になると葉を落としますが、葉は枝ごと落ちるという特徴があります。

 ラクウショウの手前の草地に、ムクノキの枯葉が雪を被っていました。

 雪を被ってはいても、温かみを感じさせる配色です。

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 落羽松の池の反対側へ廻ってきました。

 この場所は私のお気に入りの場所ですが、何度来ても、その度に新しい表情を見せてくれます。

 今日は池の水面に雨だれが波紋を広げ、池の東側では、イチョウの葉が晩秋の情緒を演じていました。

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 遊歩道へと戻る途中で、青々とした曼珠沙華の一株が、地表にへばりついた草と一緒に、雪にまみれていました。

 曼珠沙華は冬の間、緑の葉を茂らせて地下の球根に養分を蓄えます。

 9月に突然真っ赤な花を咲かせる瞬発力は、他の草々が葉を枯らす冬に、忍耐強くエネルギーを蓄える日々が支えているようです。

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 そして、見事な樹形のヘツカニガキ、今年は葉序の観察で何かとお世話になったメタセコイアが見えてきました。

 出口はもうすぐそこです。

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 東京都心での11月の積雪は1875(明治8)年の統計開始以降初めてという日に、ほっかほかのダウンと長靴姿で、気ままな植物園散歩を楽しんできました。

 振り返れば、イチョウの葉の雄雌に違いがないことを教えてくれた雌イチョウが、美しく着飾って見送ってくれています。

 今日も一日、存分に楽しませて頂きました。

 みなさん、どうもありがとうございました。

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 紅葉並木で至福のひと時を過ごした後、霙の森へと入ってゆきました。

 アメリカスズカケノキが舞踏会ができそうな広さに、枯葉の絨毯を敷き詰めています。

 緋色の絨毯で踊られるのはパソドブレでしょうか、それともマンボでしょうか。 

 霙降る街を逃れきたムクドリ達が、森の梢で賑やかな伴奏を奏でています。

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 ほっかほかのダウンを羽織って、厚手の靴下に長靴をはいた私は、霙降る空の下で身も心もほっかほかです。

 ムクロジが、ライトオレンジの落ち葉の上で、明るいイェローの葉を枝に飾っていました。

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 それにつけても、黄葉する樹は多々ありますが、枯葉の見事さでイチョウに敵うものはないと思います。

 イチョウの枯葉は光の加減や方角によって、同じ樹とは思えぬほどに豊かな表情を見せます。

 空へ向かって伸び上がる樹の周囲に散り広がる枯葉のハーモニーは、見る人の胸奥で何かをコトリと動かす力を秘めています

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 アメリカキササゲの個性的なフォルムに目を奪われながら、森の奥へと進んでゆきます。

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 ムクロジやイチョウが秋を飾る森を外れて、さっぱり葉を落としたカリン林に入ると、冬の気配が増してきました。

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 スギやヒノキの林の中で、赤い実を付けたセンリョウが葉にうっすらと雪を乗せていました。

 針葉樹の下で常緑樹が見せる赤い実は、冬の光景そのものです。

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 今年はツツジに花が咲くほどの秋でしたが、森の奥では季節の時計が、いつも通りに針を進めていたようです。

 イチイの木が、ふんわりと雪を被った姿に秋の気配は殆ど感じられません。
 
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 針葉樹の森は不意打ちの雪を迎えても、戸惑うことなく、玄冬の装いに姿を変えていました。

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 前回のブログに、今年は平年よりも暖かいと書いたばかりなのに、朝ベッドから抜け出して窓の外を見ると、空から白雪が間断なく地表へと降り注いでいました。

 11月中に東京都心で初雪を観測するのは54年ぶり、積雪の確認は1875(明治8)年の統計開始以降初めてだとTVニュースが伝えています。

 植物園フリークを自認する筆者としては、このような日を黙って見過ごす訳にはいきません。

 遅めのブランチを済ませ、ホームページで小石川植物園の開園状況を確認すると、普通タイヤのままで自家用車を走らせました。

 いえいえ、ご心配には及びません。

 積雪予測は2㎝ですし、交通量の多い東京都内は車道に雪が積もる心配はありません。むしろ、雪解後の凍結にこそ注意が必要です。

 植物園に入ると、正門左手のバショウの葉に白い雪が見えました

 私は今回、南国植物のバショウに雪が積もる光景を初めて目にしました。
 
 念のために2年前の雪景色を確認すると、同じ場所のバショウは枯れていましたので、緑のバショウに雪が積もる現象は、珍しい光景に違いありません。

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 その先のソテツにも雪が積もっていました。

 ソテツは伊豆大島辺りでは普通に育ちますので、ソテツに雪が積もる光景はバショウほど珍しくはないと思えます。

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 傘を片手に、正門から続く坂道を登ってゆきました。

 坂の途中のカイズカイブキの枝にも雪が降り積もります。

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 ツバキの葉が雪の滴に濡れて、艶やかな光を放っていました。

 日本語の「つばき」は厚葉樹(あつばき)や艶葉樹(つやばき)が転じたものとされますが、艶やめく葉を見ていると、さもありなんと思えます。

 暖かな秋に惑わされ、花開いたツツジ「オオリュウキュウ」が雪を被ってうなだれていました。

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 本館横を抜けて桜園の前に立つと、雪の静けさの中へ伸びる遊歩道は、雪雲に背景を包み隠され、地平線までも続くかに見える森の中へと消えてゆきます。

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 右手のガーデンでは、コウテイダリアが雪のレースに縁どられ、屋根の高さに桃紫色の花を咲きそろえています。

 桜園の左手奥では、イロハモミジが霙まじりの雪に木肌を濡らせ、黒い梢の先に晩秋のグラデーションを見せていました。

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 園内の奥へ進むほどに、くろがねの鏡のような遊歩道の脇に、雪の白さが目立ちます。

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 気ままに遊歩道を右へと逸れると、ソメイヨシノ「帝吉野」の名札の下には彩のモザイクが敷き詰められていました。

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 そしてその先にフォトジェニックな光景が待っていました。

 二日前に同じ場所を通りましたが、その時とは見違えるほどの光景で、白い霙が紅の葉へと時雨れていました

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