不等葉という言葉はありますが、不等枝という言葉があるかどうかを筆者は知りません。
しかし、昨年12月7日の「十字対生の不等葉と側枝の不等性」で述べたように、アオキやガビハナミズキとタニワタリノキなどで、不等葉が発現する場所に於いて、側枝の不等性を観察しました。
筆者はその理由を、不等葉を発現させる植物ホルモン等が、側枝の伸展にも影響している可能性を推測します。
不等葉の発現と同様の機序で、水平方向に伸びた枝の側枝に長短が生じるのであれば、不等葉にならって不等枝という言葉を用いることが許されると考えます。
植物学用語辞典(八坂書房)には、「対生または輪生葉序にあって1節につく葉の間に異形葉性がみられる場合は、とくに不等葉性 anisophyllyと呼ぶ。例えば、クサギでは大きさの異なる2枚の葉が組みとなって十字対生する。」と記されています。
筆者は互生葉序にも不等葉性が認められることを確認しましたので、植物学用語辞典の説明を「同年枝の中の同一節、ないしは特定葉の前後やその近傍の葉の間に異形葉性が見られる場合に不等葉性がある」と解釈し、更には「葉」という語を「枝」に置き換えた解釈が、筆者の意図する不等枝、ないしは不等枝性です。
※ 蛇足ですが、筆者は素人です。ここの記載は個人的な見解です。学術的に認められたものではありません。
その主旨が、筆者の「不等枝」の意味するものですが、その内容は、本年5月15日の「互生葉序の不等葉性の確認」の中で述べた、「不等葉を発現させる樹は、地表へと向かって側枝を伸ばす」と同様の現象を見ていることになります。
ところで、今回筆者は小石川植物園で以下のようなラクウショウの側枝を観察し、不等枝性と判断しました。
ラクウショウが上記画像の左端から右へと褐色の枝を伸ばし、その枝から複葉のようにも見える側枝を、上下左右に数多く伸ばします。
画像の左端から伸びた、褐色の枝の上側(向軸側)に付く側枝と、褐色の枝の下側(背軸側)に付く側枝の長さに明確な差を認めます。
なので、それら側枝の長さを測定しました。
ラクウショウは互生葉序なので、計測に当って、側枝が上側(向軸側)にあるか下側(背軸側)にあるかの基準を以下のように定めました。
上側(向軸側)とは、元枝を真上から見て、その枝に付く側枝幅が元枝の幅の中に納まっているもの。
下側(背軸側)とは、元枝を真上から見て、その枝に付く側枝幅が、完全に元の枝の陰に納まっているもの。
計測結果です。
上側(向軸側)の側枝長の平均は103.7㎜、下側(背軸側)の側枝長の平均は148.3㎜でした。
エクセルでT検定を実施し、両者に有意差を確認しました。
以上のことから、十字対生のアオキやガビハナミズキやタニワタリノキなどと同様、互生葉序の裸子植物に於いても、側枝の出現する場所が、元枝の上側(向軸側)か、下側(背軸側)かに因って、側枝の大きさに差が生じる不等枝性が見られる場合があることをラクウショウで確認しました。